Solicitation:Final game 1 - 1/6



「皆お疲れー!休憩だ、休憩だよー!30分の休憩を取りまーす!」

棗の言葉に、皆が息を吐いた。
紀伊梨辺りはもう真っ先に座り込む始末。

「疲れたー!もー!なっちん酷いよ、あんな暗いとこ用意するなんてー!」
「それは俺も同意するぞ、五十嵐。黒崎棗、友人が極端に苦手な物をゲームに織り込むな!不平等だ!」
「悪い悪いwちょっと諸事情でね、どうしてもあのステージは入れないといけなかったのよw」

諸事情とは、スポンサーの事である。
跡部グループが開発した新しい蛍光塗料、序に試してよと言われたので、どうしてもやらねばならなかったのだ。

「その代わり、襲うなとは言っておいたでしょ?まあ、お前言い包められてあっさりライト渡しちゃってたけどw」
「ライトを渡しただと?」
「うん!ちょー怖かったよー!結局暗い所に置いてけぼりにされちゃうしさー!」

今明るいし皆居るから喉元過ぎて熱さ忘れかけているが、あの時あの瞬間は本当に怖かった。
あんなに真っ暗で1人なのは久しぶりだった。
救いは、お化け屋敷などではないから怖がらせてくる物は居なかった事と、完全に真っ暗になるかと思いきやゴール近くだったので、壁の説明文が光ってくれていた事。それから割と早く柳が来てくれた事であろうか。

「ほう!1人で耐えたのか。見上げた根性だな。」
「見上げた根性・・・?根性って見えるもの?」
「違うわw凄いなって事だよw」
「おお!そーなの!?紀伊梨ちゃん褒められた?やったー!」
「やったー、ではない!根性は褒めてやるが、もっと勉学に励まんか!」
「えー!」
「お前ももう少し分かりやすい言葉で言ってやったらー?」
「甘やかすな、黒崎棗!」
「へーい。」




少し離れた所では、桑原が座っていた。

「流石にちょっと辛いな・・・」
「ああ、このタイミングの休憩は有難い。次のゲームを考えてもな。」
「次のゲーム?」

そんなん知らされてたっけか。
と言いたげに自分を見上げて来る友人に、柳は小さく笑った。

「序盤は兎も角、今頃になってくると話は別だ。推定される終了時刻、休憩のタイミング、黒崎やビードロズの思考パターンから、ある程度の推察は可能になる。」
「へえ・・・で、推測では何なんだ?その、次のゲームって言うのは?又、ややこしいのか?」
「いや。とても簡単である確率、89.95%だ。」

そう、とても簡単。

毎日、やってるからね。




「あー、終わった終わった。」

怠いです、と全身で語る千百合は思い切り椅子の背もたれに凭れ掛かって居る。

「お疲れ様、千百合。」
「ああ、お疲れ・・・有難う。」
「ふふっ。どういたしまして。」

もう動きたくないぞモードに移行している千百合に、幸村はドリンクを投げ渡してくれた。

「疲れた・・・」
「ふふ。でも、疲れただけの甲斐はあったじゃないか。ちゃんと勝てたんだし。」
「まあね・・・っていうか、何?何かあった?」
「うん?」
「なんかやたら勝つ事にこだわってなかった?特に最後の方。」

いや、元々それでなくても、幸村は結構勝ちに拘る方なのは分かっている。
基本スタンスとして「やるからには負けたくない」という発想があるのは幸村あるあるだし、だからある程度までは納得がいくけど。
でもそれにしたって、なんか気合入りだしたなと思ったのだが。
なんて考えていると、隣の幸村はちょっと眉を下げて困ったように笑った。

「・・・そう見えたかな?」
「見えた。」
「そうか。一応、一生懸命隠そうと思っていたんだけど。」
「?隠すような事なの?」
「まあね。だって恰好がつかないだろう、千百合の騎士役になれなかったのが悔しかったからなんて。」

アクエリアスが気管に入った。

「ワインセラーの所で、あんな状況で恋人を1人置いてけぼりにして、其処までしたのに勝てなかったなんて。そんな事になったら悔しくて情けなくて、当分立ち直れないよ。」
「・・・・ッ、エホ、」
「千百合?気管に入ったのかい、大丈夫?」

煩い、近づくな原因め。
そう言いたいのに、さっきからケホ、と咳き込む音しか口から出てこない。
背中を撫でる手に頑張って意識を向けないようにしながら、千百合は咳が納まるのを待つのだった。




(勝った・・・)

ああやれやれ、とんだギリギリセーフだぜ。
よっしゃ、と言いたくなるのをグッと堪えて、仁王は平気な振りをした。

駆け引き駆け引き。
此れはどっちが先に必死を露呈するかの勝負なんだから。

仁王はこんな事を思っているが、当然と言うかなんというか、柳生だって心境としては似たような物である。

(負けてしまいましたね・・・ここで勝負を決めておきたかったのは山々ですが。)

だって、次のゲームってあれだろ。
何も言われてないけど、もう絶対あれだろ、分かってるんだから。
此処で持ってこないわけないんだから。

ああ、くそ。

「・・・・・・」

手の中でラケットを転がす。
勝てるのか。
いや、勝ちたいし勝つ気ではあるけど、そうじゃなくて。もっと根本的な所での話で。

「・・・止めますか。」

柳生は珍しく考えるのを止めた。

良いや、もう。ままよ。
此処まで来たらどうなっても、もうそれで良いよ。

運を天に託そう。
出来る事はもう全部やったから。