Solicitation:Final game 1 - 3/6


ラストゲーム。

もう察しの付いている者も何人も居るが。


「ではこれより!最終ゲームのテニスを始めます!皆遠慮なくガチってね!」


棗がメガホンで叫んだ。
そう、ラストゲームは本気のテニス。ガチ試合。
下手な小細工や追加ルールは無用。

くじとドラフトはもう済ませた。
シングルス、ダブルスの組み分けももうリーダーの頭の中に有る。

「よーし、じゃあ整列!」

Aチーム
仁王:紫希・紀伊梨・真田・柳

Bチーム
柳生:千百合・幸村・桑原・丸井

「礼!」

さあ、ゲーム開始。




通常、大会などで団体戦を行う場合は最低7人必要だ。
D1、D2、S1、S2、S3。2、2、1、1、1で、これが計7人。

が、今回は5対5になるのでこれを少し変える。
D1、D2、それからSを1人だけ、これで行く。

Dを1つSを3つにも出来るが、それだと2勝2敗になった時どうする的な問題が出て来る。
それからこれは幸村の意見をちょっと取り入れているが、今立海はどちらかというと実力の比重がSに振れている。
今後の為にもDの練習させてよ、と相成ったのだ。

「第一試合、D2始めるよー!両チーム、前へ!」

Aチームからは、紫希と真田。
Bチームからは、千百合と桑原が出る。

「・・・・・・」

ちら、ちら、と気遣わしげに真田を見やる紫希。

「む?どうした?手が痛むのか?」
「あ、いえ、そうではなくて、そのう・・・」
「何だ。」
「・・・・真田君は、本当に私で良いんですか?」

ダブルス、シングルスの組み分けの時だった。

真田が言い出したのだ。
シングルスならそれはそれとして良いが、もしダブルスとして出されるのなら。
それなら、ペアは紫希が良いと。

「春日。」
「はい・・・・」
「先ず、戦力の弱点を作らん為に、3人居るテニス部は全て別れ別れになる。自然、俺は柳、又は仁王とは組めんわけだ。」
「はい。」
「となると、次にお前と五十嵐、どちらと出るかという話になる。」
「はい。」
「はっきり言おう。俺は足の遅い奴とペアにされると少々やり辛い。」
「はい・・・!」

ですよね。
そうですよね。

いきなり皆の前で紫希を凹ませ始める真田に、皆驚き気味に2人を見守る。

だが真田は、そんな事意に介さない。

「同じように、体力の無い奴もだ。持久力、力、技術、どれを取ってもお前とはプレイがし易いとは言えない。」
「はい・・・・・」
「だが、それは別に構わん。」
「はい・・・え?」

紫希が目線を上げると、真田は思いの外普通の顔で紫希を見ていた。
何時もと変わらない。
当たり前の事を話している目。

「・・・でも、」
「少々やり辛い。それだけの話だ。」
「それだけって、」
「それだけだ。それよりも俺にはもっと重要な事が有る。」
「・・・?」

「途中で音を上げて諦める奴だ。そのような奴とは俺は絶対に組まん。組むだけ無駄だ、勝てるわけがない。」

辛いとか。
きついとか怠いとか、もう無理とか。
百歩譲って、勝負が終わった後にぼやくのは許すとしても、勝負の最中にそんな事を思う奴なんかとは、真田は絶対組みたくない。

そんな事考える奴は疫病神であると、真田は本気で思っている。
勝つ気で居続けるのは勝利の第一歩、いわばスタートライン。
どんなに出来なくても、最低限其処のラインからは1歩も後退しないで欲しい。

諦めるな。
弱気になるな。
自分は最後の最後の瞬間まで絶対に諦めないから、お前も最後まで全力で動け。

それが真田がペアに求めている、最重要事項である。

「お前は確かにこの場の誰より、能力的には劣る。」
「・・・・・・」
「だが、それでも構わん。お前なら、最後の最後まで動ける筈だ。」

別に紀伊梨が直ぐ音を上げるとは思っていない。
ただ、真田はある意味では、紀伊梨より紫希をとても信用している。
この自信過小な友達は、その臆病さゆえに出来ない事は決して言わない。

紫希は頑張ると言った。
頑張ると言ったからには、本当に頑張るのだ。

「行くぞ。」
「・・・は、い!」