「少しキツめに縛った方が良いぜよ。」
「そうだろうな。緩いと、もう一度タイムを取らねばならなくなるかもしれない。」
「ふん!」
「きつ過ぎるだろ止めろw血が止まるわ、俺がやるw」
「え?血が止まるのって、良い事っしょ?」
「循環が止まる、という事です。」
「??じゅんかん?」
「ええと・・・・」
巻き直しをしているAチーム。
Bチームも今はタイムで、ドリンクなど補給中である。
「ふう・・・」
美味い。
運動している時の冷たいスポドリは、何故こんなに美味いのか。
「千百合、桑原。どうだい?」
「まあ、ついていけてるかな。」
「急造の割には出来てると思うぜ。黒崎、お前やっぱり上手いな。」
「そ?」
其処に居ておいて欲しいんだけどなー、な所に千百合は居る事が多い。
ダブルスとしてはとても有難い。
「相手も疲労し始めています。競っては居ますが、なるべくペースを崩さず頑張って下さい。」
「オッケ。」
「ああ・・・・」
「ジャッカル?どした?」
「・・・いや。」
聞こうか。
聞くまいか。
ううん。
「・・・・・」
「何?」
「あ、いや。何でも・・・」
「言え。」
「何でもな、」
「言えっつってんだろ。」
「・・・・・・」
千百合はこういうのが大嫌いである。
優しさなのかもしれないが、言いかけておいて止めるなよ。
「・・・別に、なんでも良いと言えば良いんだけどな。」
「はあ。」
「お前、何で俺とダブルスなんだ?」
Aチームでは、真田は紫希を指名した。
ダブルスやるなら、且つ紫希か紀伊梨しか選べないなら紫希が良い、と。
同じように、千百合は桑原を名指しで指名した。
どうせ自分はダブルスなんだろう、それなら桑原とが良いと言って。
「別に嫌ってわけじゃ無いぜ?俺は構わないけど・・・でも、どうせダブルス組むんなら、幸村と組んだ方が良かったんじゃないか?」
「・・・・・・」
そうね。
それは千百合もそう思う。
別に恋人云々じゃなくて、ロジカルに考えてもそうするべきなのだ。
コンビネーションが物を言うダブルスで点を取るなら、お互いテニス部で且つ親友同士の丸井と桑原が組むのが、先ず妥当。
その次に幸村はまあ何処で何に当てられても勝てると思うから、千百合と柳生をどう配置するか、というのを考えて・・・というのが普通の流れ。
それが分からない千百合でもなかろうに、何故わざわざ丸井と桑原を別々にするのか。
まあ、分けられてもそんな致命的に困るという程の痛手ではないから柳生は許可したわけだが。
「・・・紫希ってさ。」
「ん?」
「見た目に寄らず、結構根性あると思わない。」
「え?春日が、か?ええと、まあ・・・そう、だな。頑張るよな、かなり。」
急に話が明後日の方に飛んだが、返事としてはYes。
あの右手に包帯でラケット固定しながら真田について行く姿を見て、体力無いなとは言えても根性ないなとは誰も言えるまい。
「そういう事。」
「おい、ちょっと待て!?どういう事・・・」
「さ、始まるみたいだし行こ。」
「おい!」
何で自分とダブルスなのかを聞いたのに、紫希が根性あるという話だけされて終わった。
わけがわからないまま、でももうタイムは終わりなので、先にスタスタ行ってしまう千百合の後を桑原は慌てて追う。
(悪い、桑原。)