「紫希ぴょーん!」
「紀伊梨ちゃん、」
「勝ったよ、紫希ぴょん!凄いよ凄いよ、やったー!」
「い、いえ、私は、何も・・・真田君が凄いんです、私殆どお任せしてしまってて、」
「何を言う、これはダブルスだ。勝ったのならば、それは2人の功績だろう。」
「そうだと、良いんですけれど・・・」
「いや、ようやったぜよ。」
「ああ、胸を張れば良い。お前は勝ったんだ。」
「・・・有難う御座います。」
へたり込みながら紫希は力なく言った。
もうガス欠だ。完全にへとへと。
でも。
でも、勝った。勝てた。
(良かった・・・)
やった。やりきったぞ、自分は。
エネルギー空っぽになったけど。
「紫希ぴょん、足痛くなーい?」
「え?足、ですか?」
「そうそう!最後転んでたっしょー?」
「最後、・・・!」
そうだ。
千百合。
紫希はバッとBチームを振り返った。
が。
(・・・普通、ですよ、ね?)
「紫希ぴょん?どったの?」
「あ、いえ・・・あ、あの、紀伊梨ちゃん、少し聞きたいんですけれど、」
「はいはい!なーに?」
「あの・・・試合中なんですけど、そのう・・・千百合ちゃん、何かこう・・・」
なんと言おう。
辛そうだった?
悩んでいた?
変だった?
でも、千百合の事だから悩みがある事そのものを察されたくないと思う。
「・・・つ、かれてませんでしたか?」
「えー?でもでも、普通に疲れるっしょー?今日はずーっと遊んでたんだもん!」
「・・・そう、ですよね。」
紀伊梨は聡い。
勉強は多少苦手でも、人の機微には敏感だ。
具体的な事まで一気には突き止められないが、何か変だ、何かおかしい位の事はすぐ分かる。
まして親友の事なら尚更。
逆に言うと、その紀伊梨が何もないと判断しているのなら。
(・・・見間違い?私の気の所為でしょうか?)
自分も疲労していたし、その所為かな。
ドリンクを受け取りながらそう思う紫希は、知らないのだ。
幸村の言う事は正しい事。
つまり、テニスを介してあの瞬間、誰より千百合を分かっていたのは自分であったことを。