Solicitation:Final game 2 - 4/8


何か変だ。
何かおかしい。

言い様の無い変さというか、なんというか。
そういうもやもやした感情が、今コートを覆っていた。

「15-15!」

着実にゲームは進行していく。
その間でも。

「・・・・????・・・?」
「おい、何処見とるぜよ、集中しんしゃい。」
「だってー!」

さっきから仁王が気になって気になって、紀伊梨はとても集中出来ない。

何か変だ。
仁王がおかしい。
どこがとは言い表せないのだが、何処かがおかしくて。
でもやっぱり具体的には分からないから、答えを求めて目が何度もボールを無視して仁王の方へ行ってしまう。さっきからその繰り返し。


(お気持ちの方、とてもよく分かりますよ五十嵐さん。)
(俺達でさえ、何か気持ち悪いと思うくらいだからな。五十嵐なんか尚更だろい。)

相手チームの柳生と丸井も、紀伊梨の気にしている気持ち悪さは分かる。
というか、伝わってきている。紀伊梨も違和感の中でプレイしているのだろうが、柳生と丸井もまた、違和感の中でプレイしていた。

そしてその心理の引っ掛かりは、ミスを誘発する。

「あ、やべ!」

上げてしまった。
向こうのチャンスボールだ。


(おお!知ってるよ、これスマッシュ打てるんだよねー!)

今、ボールには仁王の方が近い。
だから紀伊梨は言った。ごく自然に。

「ニオニオ、チャンスだー!いっけー!」

それを聞いて、仁王はにやりと笑う。

さて。
此処に居るのは。

本当にニオニオとやらかな?

「よっ、」

たん、と後ろへ一歩下がる。
足の運び方、身の運び方。
腕の振り方、目の遣り方。

このくらいなら出来るぞ。
これでも友達だから。

「・・・なっちん!?」

棗が。
自分の後ろに居る。

紀伊梨は思わず、完全に相手のコートを無視して仁王を振り返った。

何故だろう。
どうしてなんだろう。
確かに其処でスマッシュの構えをしてるのは、銀髪の仁王なのに。

それなのに。

(なっちんにしか見えない!なんで!?)

ドシュ!とスマッシュがBチーム側のコートに入った。

「・・・30-15。」

棗さえもポカーン状態である。
あれは。
あの動きはまるで。



「・・・え?ん?は?え?」
「成程・・・」
「いや何が成程っつうか・・・ちょっと待て、それ以前にあれは仁王だろい?黒崎じゃねえよな?」
「そうですよ。」

分かった。

何と言われるより、柳生は今この瞬間、はっきりと分かったのだ。
仁王が自分に何をさせたいのか。

つまり。
つまり此奴。

(イリュージョニストになれ、と。そういう事ですか。)

自分と同じ事を出来るようになれ。
そしてダブルスでパートナーになれ。

その先にきっと、自分のやりたいテニスが待っている。

それに付き合え、と仁王は言っているのだ。

「なあ柳生、何が成程・・・柳生?」

「丸井君。」

そう話しかけてくる柳生の声は、とってもとってもとっても。


とーーーーっても怒っている。


「な・・・何?」
「何が何でも勝ちましょう。ええ、そうしましょう。そうでなければ気がすみません。」
「お、おう・・・」
「とはいえ、私はテニスに関しましては初心者です。丸井君に負担をかけてしまう形になりますが、よろしくお願いします。」
「ああ、うん、それは良いんだけど・・・」
「けど、なんですか?」
「・・・いや、いいや。」