「15-15!」
「15-30!」
「30-40!」
「ゲームBチーム!3-5!」
「うあうあうあ~~~~~~!」
紀伊梨は汗だくの頭を抱えた。
やばい。
これはやばいぞちょーヤバい。
「ニオニオ、やばいよー!紀伊梨ちゃん達ちょーやばいっぽいよー!」
「ぽいじゃなか、実際やばいんじゃ。」
「だよねだよねー!もー!どーしよー!」
さっきから、凄い勢いで離されている。
食らいついてはいるが、それでも競り負けてしまう。
何故。
なんて、火を見るよりも明らか。
「ううう~~~・・・なんでー?どーしてやーぎゅ、急にあんなやる気なのー?」
何がというか、オーラが違う。
なんというか、鬼気迫っていると言うか。怒り心頭というか。
「テニスにやる気なのは良い事じゃき。」
「それは良いけどー!でも、今じゃなくて良くなーいー!?紀伊梨ちゃん達負けちゃうよー!」
(まあな)
流石に、口に出しては誰も言わないけれど。
言わないけれど、最終戦のSは、向こうに幸村を出されたらもう終いである。
負ける。
普通に負ける。誰も敵いやしないと言うか、勝った人見た事無いもん。
だからAチームが勝つには、ダブルスで2つ勝たないといけないのである。
なんとかD2は勝利をもぎ取れたが、意外や意外。苦戦しない方と思っていたD1で、思いの外、差を付けられ中。
Sは負け戦とすると、事実上今1勝1敗の決勝戦なのである。
負けられない、のに。
「・・・五十嵐、さっきの。」
「はえ?」
「俺が黒崎になった時、どう思ったぜよ。」
「ほ?どう?どうって、なっちんだー、と思ったけど・・・」
「そうじゃない、俺とやるのと黒崎とやるのと、どっちがやり易いかっちゅう話じゃ。」
「うええ?そっちの話すか!うーんと、うーん・・・」
正直、どっちがやり易いとかがはっきりわかる程、紀伊梨はテニスを知らないしダブルスも知らない。
だからこうして、判断を求められても困る部分があるのだけど。
「・・・んー、でもニオニオのほーが良いかな?」
「ほう?お前さんが黒崎っちゅうから、黒崎になったんじゃが。」
「だって、気になるもん!ニオニオが居ると思って紀伊梨ちゃんプレイしてるのにさ、いきなりそれがなっちんになったり、ならなかったりするんだよ!?どっちがやり易いとかじゃなくて、気になって気になって集中出来ないよー!」
これは紀伊梨が正論。
ゆくゆくはどうあれ、仁王のイリュージョンは現時点では不完全極まりない代物である。
日常生活ならいざ知らず、テニスの真っ最中に誰かになって、ずっとずっとその人でいる、という真似が今は未だ出来ない。
数分、数秒、1動作づつ真似るので精いっぱいだ。
いや、まあ、本来は数秒だって他の人になるとか出来ないよ、というツッコミは置いといて。
「じゃあ今回は俺のままでいこうかの。」
「おう!そーしてくれさい!」