少し時間を撒き戻し、柳生家。
夕食が終わったリビングでは、柳生が今日家から持ち出した荷物を片していた。
「あら。ねえ、兄さん。」
「?」
「その包みはなあに?」
指差して聞いてくるのは、妹の安奈である。
包み。
それは、棗がバスで渡してくれた景品。
「ああ。それは今日のゲームで勝って、その景品にと貰った物で。」
「へえ!開けても良いかしら?」
「待った!」
「え?」
普段だったら良いよという所だが、今回は駄目。
中に何が入っているか分からないからだ。
(バスであんなにも、此処で開けるなと言っていましたからね・・・まあいかがわしい物である線は仁王君のおかげでほぼ消えましたが、安奈に見せて良い物かどうかは・・・)
「・・・兎に角、先に開けさせなさい。その後、見せるので。」
「ええ?まあ、見せてくれるんなら私は良いけれど・・・」
兄にしては珍しいケチくささね、と内心で思う安奈は、今その兄が必死で自分を守ってくれてる事に気づかない。
「・・・・・・・」
「いやに慎重ね?爆弾でも入ってるっていうの?」
「ない、と言い切れないからこう言ってるんだよ。」
「えええ!?やだあ!」
ひし、と柳生にしがみつく安奈。
その眼前で、包みはスルリと解かれた。
「・・・おや。」
「あら?」
中から出てきたのは、箱。
更にその中には、シンプルなデザインの蓋付きマグが入っていた。
「・・・これは良い物を。」
「わあ、素敵!兄さんに似合いそうよ!何よ、爆弾じゃないんじゃない。」
「確かに、爆弾ではなかった、が・・・」
じゃあ、何をあんなに開けるな開けるなと騒いでいたのだろうか。
解せない。
(・・・もしやすると、他に何か?)
試しに包まれていた布の袋をひっくり返すと、安奈があ、と声を上げる。
「兄さん、何か落ちたわよ。」
「何か?」
「紙だわ。えーと・・・あら?おかしいわね。」
「見せなさい。おかしいとは?」
「だって、入部届って書いてあるのよ?兄さんは、もうゴルフ部なのに。」
ああ。
ああ。
そうか、だからか。
「・・・ふ、ふ、ふふふっ、」
「?」
そうか。
何をあんなに開けるな開けるなと言ってたのかと思ってたら、これか。
要するに、棗は皆の前でこれを渡したくなかったのである。
仁王辺りがこっそり書いて勝手に出すかもしれないし、紀伊梨辺りは入る?入る?と詰め寄って来るだろうことを想定して。
自分で考えて自分で書け。そして自分で出しに行け、という事だ。
「はあ・・・」
「???何?何か面白いの?」
「とってもね。貸しなさい、安奈。」
「え?これ?捨てないの?」
「ええ。」
とうとう来たか、年貢の納め時。
良いよ。
此処までされて負けを認めないなんて、そんな見苦しい真似紳士はしない。
「テニス部へ、転部です。」