Escape 2 - 2/6


「居ない?」
「せやねん。一応言うとかなと思うて。」

昼休み、忍足は網代の元を訪れていた。

「茉奈花ちゃんも知らへんかったんやな。」
「ええ。連絡も入ってないわ。」
「さよか。まあ名目が家出やと、俺らに連絡取ったら足が着くかも分からへんしなあ。」
「そうねー。跡部君の性格的に、用が無いなら電源切れ、まで言いかねないわね。」

跡部は勿論、可憐もマネージャーのNo.2なので、どちらかというと纏める側と言うか、運営側に立っているのである。
その2人が、揃って家出(もどき)をして、且つ連絡してこないとなると。

「やっぱり、放課後には戻ってくるつもりなんやろか。」
「まあ、そう考えるのが自然よね。「家」出って事は、家の目を逃れたいのであって、学校が嫌なわけじゃないんでしょうし?」
「言われてみればそやな。」

向日もちょくちょく家出をしているが、まあ子供というのは成長するにつれて、多かれ少なかれ親に何かしらの不満を持つ生き物である。

あんなに恵まれていて至れり尽くせりな生活の跡部でも、それは例外じゃないんだなあなんて思うと、忍足はちょっと。

「・・・若干悔しいわ。」
「え?何の話?」
「いや。俺もお供したかったわ、とちょっと思て。王様の家出とか、面白そうやん。」

もう、王様の家出っていう、その単語からしてもう面白い。
でも、そうとしか言いようがないんだけど。

「ああ、ふふふっ!分かるわ、私もちょっと興味あるもん。どんな所行って、どんな事するのかしら?」
「普通の庶民やったら、ファーストフード行ってカラオケ行って、とかやろか。」
「そうね、それから今回みたく女の子がお付き合いしてくれるなら、何処かでその子のリクエスト場所に行ったりとか、ね。」
「足を延ばしたら、海にも出れるな。」
「ああ、良いな海!青春の香りたっぷりだわ。」

出来ないとなるとやりたくなる、それも思春期の性。
家出。エスケープ。学校をサボって非日常の満喫。ああ、良いな。

又、本来忍足も網代も品行方正なので余計に羨ましいのである。
不良がエスケープするのとは違う。不良にとってはエスケープは「日常」なので、そんなに面白いもんじゃない。
普段やらないから面白いのだ。

「・・・・・・・」
「・・・侑士君?どうしたの、黙っちゃって?」
「提案やねんけど。」
「あ!待って、当てさせて、ね?」

パチン、とウインクを飛ばして耳元に顔を寄せて来る網代は、多分もう自分の思考を読んでいるのだろう。

「5限は、屋上にプチ家出♪」
「しよか。」

今日は快晴。

非日常には良い日だ。