その夜。
可憐はチアガールの熊を見つめて、ぼんやりと考えていた。
家出の事。
跡部の事。
梓が泣いた事。
忍足と網代の事。
「考える事、いっぱいだなあ・・・」
しかし、考える事いっぱいだなと思いつつ、出来る事はと言われると少ない。
跡部の家出は跡部の事だし。
梓の号泣は梓の事だし。
忍足と網代の事は忍足と網代の事だし。
(・・・いやいやっ!ううんっ!そうじゃない、そうじゃないよっ!だって皆は友達だし、私はマネージャーでもあるもんっ!)
友達の力に精一杯なる、なんて当たり前の事だ。
そう、今日ビードロズが自分の為に相談に乗ってくれたり、公園に付き合ってくれたのと同じ。
友達とはお互い支え合うもの。
まして自分はマネージャー。
梓は兎も角として、忍足や網代、跡部など部活に関わる仲間に対しては、悩み事があるのならより一層解決に向けて尽力するのが義務ではないか。
そうだ。これは頑張らなきゃいけない事なのだ。
例え自分が当人でなくても、手伝えることは何処かに有る筈。
(うんっ!そうなんだよっ!私は皆を応援するんだもんっ!このチアガールの熊さんみたいにっ!)
「ねっ、熊さんっ!私頑張るから、応援してねっ!」
そう言って、机に飾ったチアガールベアを振り向く可憐だが。
「・・・・・・」
何故だろうか。
心なしか、応援を求められた熊さんの目は、どうも無表情に見える。
いや、人形なんだから瞳に感情が無いのは当たり前なんだけど。
ただ、そういう風に見えてしまったが最後、もうそうとしか見えなくて。
なんでだろう。
「可憐?ご飯だよ!下りておいでー!」
「あっ!はーいっ!」
夕食を告げる母の声。
扉を開けると、早く行こうと言わんばかりに尻尾を振るショコラが飛びついて来た。
「あははっ!ショコラ、くすぐったいよっ!」
そう言って笑う可憐は、もう熊の事が気にならなくなっている。
あれはきっと気の所為だ。
自分がしようとしている事は正しい筈。
その、筈。