紫希は部屋で熊を眺めていた。
(可愛い♪本当に良い物を頂いて・・・あ、違いました。お借りしてるんでした。)
可憐の話からすると、いつかお婆さんの話が解決したら、これは返すべきだろう。
解決を願う気持ちは勿論あるが、そうなるとこのベアとはいずれお別れ。
今の内に沢山大事にしよう。
~~~~♪
「あれ・・・ふふふっ!」
紀伊梨からのLINE。
グループに、ベアと撮った写真を流している。
可愛いでしょ自慢する紀伊梨に対して、反応は様々。
買ったのかと聞く者、汚すなよと注意する者、ギターとか良く見つけて来たなと感心する者。
棗は笑いながらしっかりと、「目標としては返す事なんだから乱暴に扱うなよw」と釘を差している。
(そうですよね・・・これは、思い出なんですもの。)
たかだか十数年しか生きていないけれど、今が永遠でない事だけは分かる。
人は皆、理想の今に辿りつく為に、逆説的に今を頑張って生きている。
でも、過去は決して死なない。
良い事も悪い事も、記憶や思い出として自分の中に積み重なっていく。
年と言うのは削られていくものじゃない。中が段々埋まっていくものだ。
これは言うなれば、人生の欠片。
(丁重に扱いませんと・・・)
~~~♪
又携帯が鳴った。
今度は棗が、紀伊梨に倣ってベアと2ショットを乗せている。
皆結構言いたい放題言ってる。
男と熊の取り合わせとか、誰が得するんだとか。
熊だけで良いんじゃないかとか。
ちょっと酷くない、と思われるようなやり取りが出来る位には、自分達は馴染んできているのだなあ、と思うと、棗には悪いが紫希にはちょっと微笑ましい。
何を発言するでもなく、微笑みながら流れて行くログを見続ける紫希だったが。
紫希ぴょんと千百合っちもやろーよー☆
「え、」
紀伊梨の発言を皮切りに、又使われるぞ、でも他の熊も見たい、なら熊だけで良いじゃん、折角なんだから倣えば良いのに、とどんどん会話が進んで行く。
(え、え、ど、どうし、え、)
どうしよう。
ベアのピンを撮れば良いか、と紫希が迷っている間にも、紀伊梨と棗から2ショット上げろコールがポンポン出て来る。
「ど、どうし・・・どうしたら・・・!」
恥ずかしいから写りたくない。写真は苦手だ。特に自分以外人間が居ない写真は。
でも写れと言われてる。
紫希が兄に頼んで、ベアで顔を隠す自分の写真撮影を頼むまで、後数分。