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どうやら、相手の選手は監督と何か話しているらしい。
勿論1人で試合など出来ないので、必然的に幸村もタイムになる。
ベンチに戻って、何やら会話する幸村の背を千百合は見つめた。

(後3ゲーム・・・)

幸村の事だから、油断とかそういうのは一切ない。
でも、分かっていても、試合が終わるまで油断は出来ない。

別に、今此処で負けた所で、有体に言えばどうでも良いのかもしれない。
もう立海は4つ勝っている。
仮に幸村が此処で負けても、勝ち上がるのは立海の方。

だから気楽にやれば良い・・・なんて。
そんな次元の話誰もしていない事を、紫希も紀伊梨も棗も知っている。況や、千百合をや。

誰が相手だろうと、負けは負け。
幸村にのしかかる敗北の十字架は、目の前の試合に勝つ事でしか逃れられない。

「ねえ、ちょっと!」
「・・・・」
「ねえってば、千百合ちゃ、」
「喧しい!こっちは試合見てるんだよ、あっち行ってろ!」
「う!そ、そんな怒らなくたってえ~・・・」
「あー!ひたきおねーちゃんいけないんだー!」
「おーこられた怒られたw」
「せーんせーに言ってやろー!」
「ひたきさん、千百合ちゃんに見させてあげて下さい・・・紀伊梨ちゃんと棗君も囃し立てないで、」





「あんなに騒がしい大人も珍しいのう。」
「というか、記者だからと思って放っておいたけど・・・あれ、記者なんだよな?」
「そのようですが、あの振る舞いでは些か疑念を覚えてしまいますね。」
「ない事ない事書かれねえと良いけどな。」
「怖い事言うなよ・・・」

指示された場所で固まって見ている、レギュラー以外の立海勢も、なんか観客席で異様にわちゃわちゃしているのは伺える。
皆幸村の強さを知っているので、幸村よりも寧ろあっちの方が若干気になり、ちらちら見てしまうのだ。

「ま、2回戦以降は心配しなくても大人しくなるだろい。」

その丸井の言葉に。

「・・・まあ。」
「じゃな。」
「心配はしていませんがね。」

だって今踏んだもんな。
誰もが踏むのを怖がって近寄りもしない地雷を。




一方、ベンチでも小鳥遊の振る舞いは話題になっていた。

「あっちは輪をかけて騒がしくなるな。」
「部長!俺が行って来ます、許可を頂きたい!」
「いや、行かなくて良いから!」
「しかし!」
「真田。気持ちは分かるが、もう試合どころか、1回戦全体として終盤だ。下手をすると、お前があそこに辿りつくまでの間に終わってしまうぞ。」
「柳、だが・・・」
「心配しなくても良いさ。幸村は雑音に振り回されたりしないよ、なあ、幸村!」
「はい。弦一郎、俺は大丈夫だよ。」
「・・・お前がそう言うなら、俺は異論は無いが。」

大丈夫。
全然平気。
あのくらいの騒がしさ、何でも無い。

「プレイ!」


「待たせて悪かった、幸村君。」
「いえ、お気になさらず。」
「そうか、そう言って貰えると有難い。負けが見えているのは分かっているが・・・」
「良いんです、分かります。

・・・プライドが、ありますよね。」

プレイヤーとして。
自分個人としても。

分かるよ。
自分にもプライドはあるから。

(だから俺も、負けるわけにはいかない。)

仲間に。
友達に。
自分に。

千百合に。

格好悪い所なんて、絶対に見せられない。

「・・・ハッ!」