昼飯食べたら、後2戦。
3勝とれば5試合全部はやらないにせよ、事と次第に寄っては5試合やる事になる可能性だってある。
長引けば皆その分疲れるので、スピーディーに、且つきっちりと。
後半戦を行いたいね、と皆思っていた。
思っていたけど。
それはあくまで人間の話なのであって。
そんな事お天道様には一つも関係ないのであって。あって。
「あれ?」
紫希は食べ終わった弁当箱を片づけながら上を向いた。
「どしたの。」
「いえ、なんだか今ポツッときた、よう、な・・・!?」
そのポツ、が。
ザアアアアアに代わるのはほんの数秒だった。
「避難しろ!屋根の下だ!」
「それは何処よ!」
「向こうだ、角を曲がった所に休憩所がある。」
「やべえやべえwこれはきついわw」
「ゲリラ豪雨かな。止むと良いんだけれどね。」
「試合は平気なのw」
「上がればなんとかね。ただ、ハードコートはもう使えないな。」
「あああ、降って来てしまいました・・・!」
「ま、降りそうだったからなー。」
「携帯濡れてないだろうな・・・」
「きゃああ、カメラあああ!私のカメラああああ!」
「落ち着け、最近のカメラは防水が無くても、多少の事じゃ壊れんダニ。」
「経験則ですね、仁王君?」
「プリッ。」
今日は一雨来そう来そう、と思いつつなんとか午前はもった。
このまま一日、曇りで切り抜けられないかなーと思っていたが、流石にそれは甘かったらしい。
少し離れた、屋根付き休憩所に一同は転がるようにして逃げ込んだ。
元々食べ終わって片づけかけていたのが幸いして、然程酷く濡れはしなかったが。
「この勢いじゃ、傘無しでだと当分移動もままならないね。無理に外に出ると風邪を引くかもしれないし。」
「確かに、その通りだが。しかし、厠や諸々の用事で外さねばならない場合もあり得る。」
「一先ず、此処にある傘の本数を確認しよう。此処から離れなければならない者は、必ず傘を持って行く事。体調を崩しては事だ。」
テキパキ話を進めて行く3強に、紫希は手持ちの折り畳みを持ってそっと近づいた。
「あのう・・・私、ちょっと出ても良いでしょうか?」
「紫希、どっか行くの?」
「はい。紀伊梨ちゃんを迎えに。電話に出ないんです・・・かけると電源が入っていない、とアナウンスされまして・・・」
紀伊梨はこの場に居なかった。
手洗いに行くと言って片付けを頼み席を外したのだが、傘を持って行かなかった。
きっとどこかで立ち往生していると思い、連絡を取って位置確認して迎えに行こうとしたら、なんと。
通じない。
「たわけが・・・この忙しい時に、人騒がせな!」
「電源が入っていない、か。」
「こういう場合は、大体充電切れが多いけれどね。」
「もしくは、圏外じゃが。」
「雨と電波は関係ねえしな。圏外はこの場合ないだろい。」
「でも、充電が切れそうって感じでも無かったぜ?昼にギターの写真を見せて貰った時、充電は87%だったからな。」
「何かのはずみで、勝手に電源が落ちたと言うのも考えにくいですね。鞄に入れていて、荷物同士ぶつかってスイッチが押される等はあり得ますが、五十嵐さんは携帯以外、何もお持ちになってませんでしたから。」
圏外説、却下。
充電切れ説、却下。
誤作動説、却下。
となると、次に一番有り得そうな事。
「携帯の水没かw」
「お手洗いは水場ですし、この雨ですから・・・」
「あーあ、馬鹿なんだから。」
一同は溜息を吐いた。
勿論、限ったわけではない。
でも、紀伊梨は兎に角良い悪いを問わずアクシデントに良く巡り会うので、多分正解だ。
「じゃ、紫希は此処居なよ。私行ってくるから。多分一番近いトイレでしょ。」
「いえ、私が、」
「私、ジュース飲みたいから。ついでに買ってきたいんだって。」
「でも、それにしても私も行きます!今日は、千百合ちゃんは1人は駄目です。幸村君は、取材がありますし・・・」
まだ幸村達選手に直接話を聞いてない、という事で、昼休みに食事が終わったら3強は取材を受けるという話をつけていた。
この雨は小鳥遊側にとってはラッキーで、急がずゆっくり立海の話を聞けるチャンスなのである。
幸村達だって真面目に取材する分には幾らでも応じたい。
露出が多いと来年入ってくる選手も増えるし、多ければいいと言うわけでは無いけれど、先ず立海テニス部と言う存在を知って貰わなければ有能なルーキーはやって来ないから。
だから幸村はついていけない。
代わりに自分がついていく。
「いや、大袈裟だって。」
「大袈裟じゃありません、もし何かあったら・・・」
「まあまあ、じゃあ俺が行くよw俺も喉乾いたからw」
「来るなよ、死ねよ。」
「嫌でーすwな、俺が行くし紫希は待ってなw雨の具合にも寄るけど、止んだらテニス部は移動だしw紀伊梨が戻る事を考えたら、俺達の誰かは此処に居ないとだからw」
「う・・・そう、ですけど・・・」
確かに、自分が行くよりは棗が行った方が頼れるとは思う。
それに、全員移動してしまったら、戻ってきた紀伊梨が又迷うかもしれない。
行き違いを防ぐには、ビードロズが1人は此処に居た方が良い。
「じゃあ、お願いします・・・」
「はい、任されたw」
「任されなくて良い、ついてくんな。」
「はいはいwじゃあ行ってきますねw」
こうして、千百合も棗と行ってしまったのだった。