米原少年は、今とても辛かった。
色んな意味で。
「ありがとー、博君!紀伊梨ちゃん助かっちゃったよー!」
「ああ・・・うん・・・」
米原少年が紀伊梨を見つけたのは、重ねて言うが偶々である。
会うなんて思ってなかったから、傘は自分の分しかない。
だから紀伊梨を助けようと思うなら。
2人で1つの傘に入るしかなくなるのだ。
(どうしたら良いんだよこれ・・・!いや、どうもしないけど!)
そうだ、普通にしていれば良いんだ。
どうせ、普通じゃない事なんて出来ないんだし。
いや、普通じゃない事って何?って感じだけど。
「ねー博君!博君ってさー。」
「・・・・・」
「あり?博君?博くーん!」
「・・・・・」
「ねえっ!博君ってば!」
「!な、何!?なんだよ!」
今完全に意識が無限の彼方へ旅立っていた。
嫌だって、現実がちょっと心臓に悪いもん。
「博君って、此処にはテニス見に来たの?」
「へ?」
「ほら!出場はしてないっしょ?」
「ああ。うん。」
そう、瀬良中学校は地区予選で落ちた。
だから、米原は此処に用は無い、と言えば無いのだ。
「まあ、見学だよ。来年に備えて。上手い奴を見るのも勉強になるからな。」
「おー!博君えらーい!」
「え、偉くねえよ!」
「えー!偉いよー!紀伊梨ちゃん、好きな物はあってもべんきょーしないもーん!」
「それはしろよ・・・というか、したくならねえの?好きな物があるなら、色々知りたいとかって。」
「うーん、紀伊梨ちゃん的には、それってべんきょーかなー?って感じなんだよねー。ほら、楽しい事ってさっ!れんしゅーとか、べんきょーって感じしないじゃん?言われなくても何時までもやってたいし!」
一応便宜上練習と言ってるけれど、紀伊梨はそんなにいう程ギターの「練習」、ボーカルの「練習」というものに義務感を感じているわけではない。
弾いていたらいつまでも弾きたくなるし、歌っているといつまでも歌っていたくなる。
だから所謂、「部活の練習辛い」系の愚痴は紀伊梨にはよく分からない。
嫌いな事なら兎も角、好きでやってる事の練習に関して、苦痛を感じた事が無いからだ。
故に、練習熱心だね、と言われるのも紀伊梨は褒められて嬉しいけれど、あんまりピンとはきていない。
熱心も何も、楽しい事をただただやっているだけだから。
「あー、お前そっちなんだな。」
「?」
「努力してるって思ってない系か。」
「???うんまあ、努力はそんなしてないお!」
(紫希ぴょんとか可憐たんとか偉いよねー!いーっつも何か頑張ってるもんなー!)
まあただ、自分は真似しようと思ってもその辺は出来ないと思う。
幸いな事に、する必要に駆られても居ない。
今は。
「あ!博君!」
「ん?」
「あんまそっち行っちゃ駄目ですぞ!可憐たんが、選手は体冷やしちゃ駄目!って言ってたかんね!ほら、こっちこっち!」
「ばっ・・・い、良いんだよこれで!」
「良くないー!」