Pre-tremolos 1 - 1/6



氷帝学園は。
現在、マネージャー達がかなりキツい活動を強いられている。

元々の人数が目減りしている上、土台の部員数がとても多いせいで、圧倒的なマンパワー不足。

だが、じゃあ他校は楽なのと言われるとそうではない。
レベルの差はあっても、皆多かれ少なかれキツい思いはしている。

立海とてもそれは例外ではなく、帰りのバスを待つ間マネージャー達はぐったりしていた。

「しんどいー。」
「ねー。倉ちゃん、大丈夫?」
「暑い・・・湿気やばい、暑い・・・!」
「倉ちゃん、暑がりだもんね。」

後半戦は無くなったんだから、そんなにキツくも無いんじゃない、という風にはいかない。
雨なら雨で、試合続行と試合中止の両方に備えるのがマネージャーの役目。天気が微妙な日は、実は仕事が2倍に増える。

「鈴は元気そうね・・・」
「私どっちかっていうと、寒がりだからなー。」


「1、2年の皆、聞いて!」


立海のマネージャーのリーダー。
こちらはちゃんと3年の女生徒が大声を張り上げた。

「皆分かってると思うけれど、今年の立海は強いわ。幸村君達が入ってきたおかげで、部のレベルは確実に上がってる!」

皆が頷いた。
これに対して異議を挟むものなど、入部当初なら兎も角今はもう誰も居ない。

「これなら全国優勝も狙えるけれど、今日はっきりわかった事があるの。強くなるに伴って、例年より部員ーーー選手、マネージャーを問わず、部員全員、要求される事が増えているわ。この人数なら回ると思っていたけれど・・・正直言って、足りない。来年じゃなくて、今年度回りきるかどうか怪しいと、私は思う。」

(やっぱ、回んないのか・・・)

ちょっとそうかな、とは林も思っていた。
先輩方が皆口を揃えて、今年はしんどいと言う。

ストイックさに磨きがかかった今の立海テニス部は、気を抜く暇がない。
休憩時間を無駄にしない為に、皆がいつも何かしらこの後の事を意識して動く。

今日だって、帰ってからミーティングにスムーズに移行できるように、マネージャーは全員は連れてこれなかった。
だから人員が分散して、キツさに更に拍車がかかる。

「勿論、来年度の事はこれから人員集めに頑張れるわ。でも問題は今年度。忽ち人が足りないの、それをどうするか。

そこで、1、2年の皆。今からでも、部外の人を手伝いに引き込んで欲しいの。」

ざわめく中、隣の倉木が手を挙げた。

「あの・・・3年生は良いんですか?」

「勿論、私達も手伝いは探すわ。でも、3年生はどう頑張っても今年卒業。今年だけじゃなくて、出来ればそのまま部に入って、来年、再来年まで頑張って欲しい。頑張ってくれる人を今からでも探したい。だから、下級生に頑張って欲しいのよ。この人数で平気と踏んだのは私達だし、こっちの判断ミスのしわ寄せだから、申し訳ないとは思っているけれど。」

誰の責任という事はそれはそれとして、1、2年が手伝いを探した方が後に繋がる。
これは筋道立った話で、だからこそ皆は更にざわつきを大きくした。

手伝い。
誰か、あわよくばそのまま入ってくれそうな人。

「マジ・・・鈴、誰か居る?」
「うーん、少なくとも生徒会は駄目だなあ。自分からするなら兎も角、こっちから二足のわらじ進んで履けなんて言えないし・・・」

(兎に角先ずは帰宅部と・・・後、幽霊部員の子とか、比較的緩い部活で暇してる子とか・・・)

スマホを取り出して、交友関係をおさらいして声をかける生徒を探す林。


この時。
軽々に彼女に声をかけた事。

林は今でも、本当に良かったのかどうか分からない。