Pre-tremolos 1 - 3/6


「ひゅーーふーーーはーーー!晴れてーーーる!やっほー!」

スキップしてくるくる回る紀伊梨は、それはもうご機嫌。
紫希も今日は笑顔が浮かんで仕方がない。こんなに良い天気は久しぶりだ。

「お天気で、ラッキーですね。」
「ねー!又やーな天気だったらどーしよかと思ったよー!」
「ふふふっ。今日は一日晴れだそうですから、この前みたいに途中で降られる事もないでしょうし。本当に良かったです。」
「そーそー!今度また携帯ボチャンしちゃったら、きっと今度こそ紀伊梨ちゃんのスマホはお陀仏だよー!」

紀伊梨のスマホは、なんと。

復活した。

乾燥剤と一緒に数日放置して、兎に角乾かして乾かして、もう寸分の湿気も無い状態にして、そろ・・・と電源を入れた所、ちゃんと点灯したのだ。
それまでかなり不便だったが、我慢した甲斐はあったと言えよう。

「米原君が止めて下さって、有難かったですよね・・・」
「そー!博君のおかげだよー!うっかり写真とかLINEのログとか作った曲とか、ぜーんぶ消えちゃうとこだったおー!もっと良いスマホカバー買おっかなー?」
「良いかもしれませんね。探せばきっと、防水のがありますよ。」
「だよねだよね!可愛いのあると良いなー!ま、可愛くないならデコっちゃえば良いかな?あ!そーだ!ねーねー、買うんだったらおそろにしないー?色違いとかでさー!」
「あ!可愛いですね!」
「ねー!紀伊梨ちゃん、黄色かオレンジが良いなー!紫希ぴょんは?白?」
「白はちょっと、汚れが目立ちやすいので。もし買うなら、ピンクが欲しいです。」
「おー!ピンク良い!可愛いー!うんうん、となると、なっちんは黒でー、千百合っちも黒かな?あ!でも千百合っちはなっちんと同じの嫌って言うから、どっちかが黒でどっちかが青ですな!ゆっきーは水色だろーしー、」
「え?」
「えーと、黄色とピンクと、黒と青と水色と・・・え?紫希ぴょん?どったの?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと。幸村君って、水色がお好きなんですか?」
「うん!あ、ゆっきーね?お絵かき好きだから色はどの色も綺麗って言うけど、どれか選べって言われたら水色が好きなんだよ!えーとね、あのー、白とセ、セ・・・セルマリン?ブルー?」
「セルリアンブルー、ですか?」
「あ!そーそー、それそれー!それを混ぜた色が好きなんだってー!」
「そうなんですか・・・知らなかったです。幸村君って、特定の色が好きだとか、あるんですね。」

紀伊梨の言う通り、幸村はどの色に対してもそれぞれ綺麗と言うし。
色を選べと言われた時も、水色が好き、とかではなくてどの色がその場で映えるか、を重要視してトータルデザイン的に選ぶので、単色でどれが好きという発想が無いのだと紫希はずっと思っていた。

紀伊梨はえへんと胸を張る。

「ま!ゆっきーの事、紀伊梨ちゃんは詳しいかんね!」
「ふふふっ。おみそれ致しました。」
「えっへん!・・・で、おみそれしましたってなーに?お味噌と何かかんけーある?」
「い、いえ、そうではなくて・・・ええと、相手の凄い所に気が付かなくって、すみませんというような意味です。」
「へー!なんでそれでおみそれ?ってゆーの?」
「おみそれと言うのはええと・・・漢字で書くとこうなって、それで・・・」




「紀伊梨がもう来とるw珍しいかよw」
「・・・・・・・・」
「・・・妹?」
「ーーー紀伊梨。朝から馬鹿言って紫希の事困らせんなよ。」
「あ、ちょっ・・・」

スッと自分を無視して、紫希と紀伊梨の元に行ってしまう千百合。
いや、良いんだけど。
何時もの事なんだけど。

「千百合っちー!おはよー!」
「千百合ちゃん、お早う御座います。」
「おはよ。紫希、構わなくて良いよ。疲れるでしょ。」
「ふふっ。有難う御座います、でもそんな事ないですよ。」
「ねー!聞こーと思ってたけど、千百合っちは紀伊梨ちゃんの事なんだと思ってるのー!何か、紀伊梨ちゃんがいつも皆に甘えまくってると思ってないー!?」
「え。ごめん、素で吃驚したわ今。違うの?」
「ちょっとー!」
「まあまあ。でも紀伊梨ちゃん、中学に上がってからぐんと大人っぽくなりましたよ!今日も3回目のアラームで起きられたらしいですし。」
「そー!そーなんだよ、紫希ぴょん良い事言ったー!えへん!どーだー!」
「はあ・・・」
「何その溜息わー!」


「・・・・」


どうした。
どうした、妹よ。

今、何か変だったぞ明らかに。

触れて欲しくないんだという事は今はっきりわかったけど。

(・・・まだ結論出てない、とか?)

今日は後半戦。

華村に、返事をする日。