「やっはwめんごめんごw」
「死ねよ。」
「すまんこってw」
此処はC組。
クラスメイトから呼ばれた千百合だったが、ビードロズでと言われたものの紫希は不在紀伊梨も不在。
そしてならば自分と棗かと思われたが、棗も野暮用があると言って散々待たされた。
もう自分だけで良いんじゃないかと言ったら、遅くても棗が居てくれた方が・・・と言い募るので、別に急ぎの用もないしこうして待ったわけだが。
「ごめんね黒崎君、うちらの為に・・・」
「ああいや、ごめんごめんw引き受けて待たせたのはこっちだしwで?話の本題は何?何か進んだ?」
「まだ聞いてない。で?揃ったよ、何?」
「えーと・・・」
「あのー・・・ね?」
「何ていうのかなー・・・」
「ね。考えてくれば良かったね。」
呼び出したクラスメイトは2人。
其処から更に他のクラスから来たと言う2人を加えて、今4人の女子が目の前に居るわけだが、4人共が何か切り出しづらそうにしていて話が見えてこない。
「・・・・・・」
(イライラしとるw)
千百合はこういうのが大嫌いである。
言いたい事が有るのならさっさと言え。
言えないのなら言うな。
察して貰おうとしてんじゃねえ、絶対こっちから話振ってやらねえからな。
とか内心思ってるんだろうなー、と棗は思っている。
し、それは当たっている。
「・・・まあまあwビードロズに用事なんでしょ?音楽の話?」
「あ。じゃなくて・・・」
「・・・・あの!もうズバッと言うね!
レギュラー決めの時、裏の方から観戦してたよね!あそこへの行き方、私達にも教えて!」
うーわ、来た。
千百合は口に出してそう言った。
「来たって・・・」
「そういう話なら却下。私帰る。」
「何で!?」
「あのねwあそこって言うのはさ、そもそも普通は行けないというか簡単に行けないと言うか・・・まあ穴場スポットなのよwそれは分かるでしょ?多分、聞く前に自分達で探したよね?」
「うん・・・でもどうしてもうちら、あそこまで行けなくて。」
そうだろう。
自分達だけで行けるならそれに越した事は無い。
ところが思いの外簡単に辿りつけなくて、頑張って頑張って、でもどうしてもルートが分からなくて、それで頼りに来たのだ。
「ちょっと待って、穴場だから人が増えると困るって事?」
「はあ?誰がそんな事言ってんのよ。」
「はああ!?」
「止めろ妹。あのね、そうじゃなくて俺達は俺達の信用を失いたくないわけ。」
「信用?」
「俺達も、自力であそこに行ったわけじゃないのね?教えて貰ったの、絶対秘密ねって条件で。」
これは棗の方便で、厳密に言うと、仁王は其処まで固く口止めしたわけじゃない。
ただ仁王の性格的に、べらべら人に情報を流されるのが不愉快である事は想像がつく。
「今俺達がこの話を教えると、俺達はその教えてくれた人からの信頼を失うわけよ。わかる?」
「・・・それはわかるけど。」
「でもちょっとくらい・・・」
「嫌。」
「千百合、」
「兄貴は黙ってろよ。あのね、私達あんた達と教えてくれた友達と、どっちが大事って言われたら友達の方なのよ。あんた達に教える事で信頼関係が損なわれるくらいだったら、あんた達に嫌われる事になっても言わないわよ。」
「あのねお前・・・言い方は選べよ。」
「本当の事じゃん。言っておくけど、酷いとか言わせないわよ。ただのクラスメイトと友達だったら友達の方が優先なのは、あんた達だって一緒でしょ。」
ぐ、と向こうは言葉に詰まる。
そもそも今日呼び出ししてきたクラスメイトとは、千百合も紫希も別にさして仲が良い訳じゃない。特段悪くもない、本当にただのなんの変哲も無いクラスメイトでしかない。
しかもそのクラスメイトとて、4人居る内の半分の2人。後の2人は今初めて顔を見た、名前も聞いた事の無い完全に知らない人。
「・・・でもじゃあ、あたし達が言わなきゃ良いんでしょ?」
「そうそう!うちらが自分達で突き止めたんだって事にすれば良いじゃん!うちら教えて貰ったとか絶対言わないよ!」
「無理。」
「ちょっと!」
「み、宮香!」
1人がとうとう立ち上がった。
隣の1人が座らせようと引っ張るが、従う気はないらしい。
「なんなのあんたさっきから!こっちが頼んでる側なのはそうだし、無理言ってる事も分かってるけど、その態度はなくない!?」
「宮香、落ち着きなって!」
「無理言ってるって分かってるんなら、断ってんだから引っ込んでてくんない。」
「おい、千百合!」
「あのねーーー」
バン!
千百合は机を思い切り叩いた。
「言っておくけど、私今怒ってんのよ。」
「な・・・・」
「道が聞きたいのは分かったわよ。でもそれ、なんで私に聞いて済まさないわけ?兄貴を待ったのはなんで?ビードロズでって指定を付けた理由は?」
「・・・・そ、」
「それは・・・・」
話を聞いてから千百合は合点が言った。
今朝話があると言い出して来た時、紫希が自分は行けないと言った時難色を示すような振る舞いをした理由。
「当ててあげようか。あんた達、私に聞いたら断られるかもって思ったんでしょ。私より兄貴の方が教えてくれそうだもんね。紫希とか紀伊梨とか尚更。あの2人だったら、頼んで頼んで頼み込んだら押し切れるとか思ってたんじゃないの。」
図星なのだろう。顔に書いてある。
「んー・・・ふふふっw」
「あんたは何笑ってんのよ。」
「いや?あのね、俺からも教えておくけど。もうこんなんなっちゃったらさ、俺達から聞くのは君達完全に諦めてるでしょ?でもだからって紫希や紀伊梨を捕まえるのも勧めないよwというか、意味ないよw彼奴らこの程度で口を割る程根性無しじゃないからねw」
「え・・・・」
「当たり前でしょwこういう所で頑固さに定評があるから、俺達みたいな双子と友達出来てるんだよ彼奴らはw」
表に出てるかそうでないかの違いなだけで、基本的に千百合と棗は性格は被っているのである。天邪鬼で、何処か斜に構えている所とか特に。
だからただ優しいだけ、ただ明るいだけの紫希と紀伊梨だったらこんなに仲良くなれなかったし、こんなに長い付き合いにもならなかっただろう。
こういう時踏ん張りきる力のある2人だから、自分達は親友になった。
此奴ら皆、紫希と紀伊梨を甘く見ている。
そんな簡単なものじゃない、あの2人に友達を裏切らせるのは。
「・・・・・・」
「分かったならこの話終わり。帰って良い?」
「待って、でもーーー」
ガララ。
という引戸の音で、一同は会話を止めて其方を見た。
「やあ、千百合。棗も。」
「こんにちは、黒崎君に黒崎さん。」
「おおwお2人さんお揃いでw」
「お疲れ。」
顔を覗かせたのは幸村。それに柳生。
「何。どうしたの。」
「いや。ちょっと話と言うか、これから誘いたい所があって。2人にLINEを送ったんだけど、既読がつかないし。」
「そこで、此処に居たのを見たと言う方が居ましたので。まだ居らっしゃるかと思い、こうして直接来たわけです。」
「マジ?ごめん見てなかった。」
「お話に夢中になってたなw・・・本当だ来てるわwごめんw」
幸村と柳生の登場で、一気に気まずそうさが増す相手の4人。
まあ流石にこの状況で「テニス部見学の穴場スポットの行き方を教えてくれ」とは言い辛い。
逆に、此処で尚も言い募るだけの根性があれば、ちらっとなら考えてやらなくもないのに。
そうやって日和るから余計にイライラするのだ、千百合的には。
「それにしてもタイミングがジャストだなお前らw流石セ・・・おお。」
「?」
「セ?とはなんですか?」
「ごめんなんでも無いw」
セコム、とうっかり口走りそうになるのをすんでの所で飲み込んだ。此処でセコムと言うと、転じて今はセコムが必要な状況であったとバラすも同然なので。
「・・・よく分からないけれど、タイミングとしては良かったんだね?」
「丁度今話終わった所。行こ。」
「本当によろしいので?」
「よろしいよwね?」
「・・・うん。」
「まあ・・・・」
「話したかった事は言ったし・・・」
「・・・・・」
話としては丸く収まったとはとても言い難いが、拗れていてももう着地してしまった。
これ以上は無理だろう、少なくとも今は。
「で?何処行くの?」
幸村はにっこり微笑んだ。
「プール掃除だよ。」