「可憐ちゃん!」
「桐生!大丈夫か?」
向日達も内川を引き上げて可憐の様子を見に来た。
内川自身は本当に限界らしく、いつになくふらついた足取り。
「可憐、大丈夫・・・?」
「うんっ!真美こそ大丈夫なのっ?」
「ハハハ・・・うん、今日はもうしんどくて泳げないケド。でもっ!私!泳げたよ!ねえ皆、泳げたよね!」
「最後危なかったけどね~。」
「ま、自転車と水泳は一度覚えたら忘れないって言うし。」
「ええ。今出来たんだから、次だって出来るわよ?明日から本数をこなして行きましょう!元の水深のプールの方に戻って、ターンの練習よ!」
「手加減して下さいよー!」
「あははははっ!」
「ふふふっ!ところで、侑士君?ちょっと良いかしら。」
「ん?」
ちょい、と手招きしてどこぞへ向かう網代に、忍足は?を飛ばしながらついていく。
まあ可憐の足もこのまま伸ばしていれば治るだろうから。
「おい、何処行くんだよ!俺達そろそろ・・・」
「あっちに戻らないと、でしょ?大丈夫、直ぐ返すわよ。ね?」
「俺に聞かれても困るわ。」
「ま、茉奈花ちゃんっ!さっきの話はっ、私もよく分かんないけどっ!」
「大丈夫よ、任せて頂戴♪」
何をどう任せよというのか。
置いて行かれた可憐達はポカン顔で連れられて行く忍足を見るしかなかった。
網代が向かったのは何という事はない、十数メートル離れただけの所だった。
別に周りに聞かれて困るような事じゃない、可憐にさえ聞かれなければ。
「解決の方法が分かったわ。」
「え?」
「可憐ちゃんと喧嘩未満状態を解除する話よ。」
「ほんまに?」
割としっかり途方に暮れていたから、これは朗報。
正直、もっと早く解決とまではいかないまでも、どういう方向に進んで行けば良いかの見通し位は立つだろうと思っていたのに、予想外に難航していたせいでちょっと焦っていたのだ。
「で、どないしたら良いん?」
「侑士君。
貴方は、可憐ちゃんにもっと感謝を伝えるべきだわ。」
網代はきっぱりと言った。
「・・・感謝?」
「そうよ。」
「何の?」
「何の、とかじゃないの。日頃の事よ。あのね侑士君、可憐ちゃんは侑士君に迷惑をかけているから、そんな自分が嫌で今みたいな振る舞いをしてるのよ。」
「それは知ってるけど。」
「ならその次の話よ。友達っていうのは、一方的に迷惑をかけたりかけられたりするものじゃないわ。そんな友達関係は必ずどちらかが嫌になる筈よ。つまり、侑士君だって本来可憐ちゃんに同じくらいとは言わなくてもそこそこお世話になっている筈なのよ。」
「まあ・・・」
「侑士君がお喋りなタイプじゃないのは分かってるわ、でもやっぱり今回は言葉が足りないと思うのよ。いつも有難うって言わないと、可憐ちゃんは自分ばっかり一方的に感謝してる気分になっちゃうじゃない?」
「・・・・・・」
そうかもしれない。
別に忍足自身は意地を張ったりするタイプではないから有難うやごめんなさいを欠かした事は無いけれど、可憐が忍足に有難うという頻度で有難うを言ってはいなかった。
確かに可憐には、迷惑じゃないもっと頼ってというだけでは駄目なのかも。自分だって可憐に色々お世話になっているんだよという、言うなればアピールが、今こそ必要なのかもしれなかった。
「可憐ちゃんだって侑士君の他にも友達は沢山居るでしょ?それこそドジっちゃった時のフォローなんかは、私達よりクラスメイトの伊丹さん達の方が沢山やってるだろうし。でも可憐ちゃんが殊更遠慮するのは侑士君にじゃない?それってつまり、そういう事が原因だと思うのよね。」
「・・・せやな、考えもせんかったわ。」
やってみる価値は十分ある。
方法はちょっと検討しないといけないけれど。
「何の話してたのかは知らないけど、さっき可憐ちゃん笑ってたじゃない?なんだかちょっと空気が解れてきたみたいだから、行動を起こすなら近い内の方が良いわよ。」
「せやな、そうするわ。」
「・・・でも、何をあんなに笑われてたの?」
「何やろなあ。」
伊達眼鏡なのばれると恥ずかしいから、口止め。
とはやっぱり恥ずかしくて言えなかった。