Wishes 2 - 5/8


一通り物色したらやっと本日のメインイベント。
短冊である。

「紫希ぴょーん!千百合っちー!2人の分も取ってきたよー!」
「有難う御座います。」
「多いわ。」

当たり前みたいな顔をして1人頭5枚計算で短冊を持ってくる紀伊梨。
そんなに願う事なんか思いつかないんだが。

「えー?お一人様1枚とか書いてなかったよ?」
「そういう問題じゃないわw」
「ふふふっ。まあ、余ったら戻しに行けばいいさ。」
「あ!余ったら紀伊梨ちゃんにちょーだい!書く!」
「願い事多すぎだろ・・・」


「良くもまあ思いつくもんじゃの。」
「紀伊梨ちゃんの可愛い所ですよね。」
「どこがじゃ。」
「え?やりたい事がいっぱいの女の子って可愛くは無いですか・・・?」
「彼奴は多すぎるだろう。」
「そうでしょうか・・・」
「お前は少なすぎる!もっと自分の希望を洗い出さんか!」
「は、はい、すいません!」


「・・・・・・」
「ん?なんだよ?」
「黒崎さん?どうなさいましたか?」
「いや、あんたら意外とさらさら書くなと思って。」
「別にコストがかかるわけじゃない。大小拘らず、願いを書いていけば5枚位ならすぐに埋まるものだ。」
「へー。」

とか柳は言うけれど。
でも実際、こうして並べられると色とりどりの5枚の短冊はなかなかやっぱり多く見えるぞ。

(・・・取り敢えずフェスの成功でしょ、これで1枚。で、親父と兄貴が痛い目に遭いますように。これで2枚。後はまあ健康でも祈っとくか。)

しかしこれでも3枚。後2枚。

「・・・ま、良いか。」

まあ、無理に捻り出す事もなかろう。
書かなかったからって別に何か損するわけじゃないし。

「おや。もうよろしいので?」
「うん。」
「テニスの事は書かれないんですか?」
「テニスの?ああ。」

千百合は幸村の恋人だし。テニス部の友達だし。
だから短冊の内の1枚は「立海テニス部が優勝できますように」とかそういう感じの願いで埋まると柳生は思っていたのだろう。

勿論、千百合にもその発想はある。
あるけど。

「それは良いや。」
「?そうですか・・・」

別に千百合が良いなら良いが。
でも書かないもんなんだなあ、なんて思う柳生に見送られて、千百合は吊るす用の笹に近づいていった。

「あーあ、面倒くせ。」

クリスマスのオーナメントと違って、短冊は笹に括りつけないといけないのが本当に怠いと思う。引っ掛けるだけだと落ちるし。

「千百合。」
「ああ、精市。」
「もう終わったの?早いね。」
「いや、あんたも来てるでしょ。」

皆はまだ書いている。
紀伊梨が徐に5枚づつ単位で配るもんだから、折角だし5個考えるかという心理が皆に働いている中、この2人はそれを無視しているのだ。

「俺が吊るそうか?」
「いや良い。自分で出来るし。」
「ふふっ。それもあるけど、俺の方が高くまで手が届くよ?」
「ああ。」

もし見られたくないのなら、見られないような所に吊ってあげるという事だ。

「ありがと。でも良い。別に見られて困るような事書いてないし。」
「そうなんだね。フェスの事とか?」
「それと、健康とこれ。」
「どれ・・・ぷっ!あはは、痛い目に遭いますように?」
「良いじゃん。」
「確かに願うのは自由だけれど、ふふふっ!これは織姫様も彦星様も聞いてくれないんじゃないかな。」
「じゃあやっぱり自分でやるしかないな。」
「ほどほどにしておいてあげるんだよ?」

そう言う幸村の短冊は僅かに2枚。

フェスの成功祈願。
後、無病息災。

なあんだ。

「精市も書いてないじゃん。」
「え?」
「テニスの事。柳生から書かないんですか、とか聞かれたから。」
「ああ、これはーーー」

「祈らなくても、あんた達自分で出来るもんね。」

だから千百合は書かなかった。
祈るような事じゃない。これは幸村達が自分で成し遂げる事。

神様の手なんて借りなくて良い。
寧ろ手なんて貸してほしくないとさえ思っていてもおかしくはない。

幸村は笑みを零した。

これだから自分はこの子から離れられない。

「何?」
「いや、大したことじゃないよ。愛おしいなと思っただけで。」

ビリ。
とどこか遠くで音が聞こえたなあと思ったら手の中の短冊がちょっと破れていた。

「書き直すかい?」
「しない!」
「ふふふっ。ごめんね、そんなに怒らないで。」
「怒ってない!」
「2人の時に言えば良かったね?」
「そういう問題でもない!」

ああ、もういや此奴。
かといってこんなに騒いだ後皆の所に戻ると誰か知らに追撃されるし。

早く味方が・・・この場合紫希しか居ないから、早く来てくれないだろうか。