季節は秋だった。
というのが、今日この日、災いと言えたのかどうか。
とにかく2人が大通りに辿り着く頃には、もうとっぷりになっていた。
「まだかなっ?」
「もうちょっとやで・・・ああ、ほら。」
「あっ!本当だ、すごいっ!」
可憐はこの日。
初めて屋外のガス灯という奴を見た。
あるのは知っていた。
でも、見る機会が今までなくて、それを知った忍足がじゃあ見に行こうかと誘ってくれたのだ。
「きれい・・・!すごいね、忍足君っ!」
「うん。」
「・・・・はっ!ご、ごめんね忍足君っ!私ったらついっ!」
「ん?」
「あの、私は見るの初めてだけどっ。忍足君は見慣れてるから、感慨も何もって感じだよね・・・あははっ。」
「・・・まあ、確かに俺はガス灯見慣れてるけど。」
「だよね、」
「でも、可憐ちゃんとガス灯見るのんは初めてやろ?」
「え?」
「綺麗やで。」
「・・・・う、ん、」
ガス灯が。
ガス灯の火の話をしてるはずだ。
どうしてガス灯を見ないで自分の方を見て言うのかと、可憐は聞き返す勇気がなかったけど。
「もうちょっと居りたいけど、そろそろ帰ろか。ガス灯点いたてことは、ほんまに暗なってくる頃やさかい。」
「あっ、そうだねっ。うん、帰ろうっ。」
今が秋じゃなかったら良かったのに、と可憐は思った。
夏だったら。
もう少し明るい時間が伸びている時期だったら、もう少し一緒に居られたのに。
「送っていくわ。家どっちやっけ。」
「ええと、来た通りから4、5本向こうで・・・っていうか、良いよ、帰れるよっ!」
「送らしたって、物騒やねんから。帰りも、明るい所選んで通ろ。」
「そ、そうっ?」
迷惑かなと言う気持ちもあるけど、可憐は嬉しい気持ちに素直に従うことにした。
それを差し引いても、普通に怖いという気持ちもあったし。
特に家の近くはガス灯なんてなく、普通に暗いから余計に。
(この辺は良いよね、ガス灯多いし…って)
「あ、あれっ?」
「・・・あかんな。」
「えっ?」
「この辺、上手い事ガス出てへんみたいやわ。」
ガス灯はある。
でも点いていない。おかげでこの辺は真っ暗だ。
「引き返そ、可憐ちゃん。あっち通ってー--」
「・・・・・むぐっ!?」
口が塞がった。
と思ったら瞬く間に目も塞がれて、周りがうるさくなって、可憐は何もわからなくなった。