5周年記念企画:天竺牡丹の花嫁 後編 - 4/9


見合いは実に呆気なく進んだ。

話はトントンと動いて行き、卒業まで後1ヶ月に迫った時には、卒業したら結婚を行うことにすぐ決まった。

友人達は本当に良いのか的なことを言いたげなーーーー紀伊梨と切原は実際言ったのだがーーーー顔をしながらも、千百合を祝福した。

千百合が、何か望みのなさそうな恋をしているのは、皆薄々勘付いていた。
好きな人と結ばれそうにないからといって、結婚しなくて良い立場ではないことも。

千百合だって、それはわかっていた。





「おめでとうございます。」

「おめでとうございます、千百合さん。」

「この度は本当におめでたいことでーーーー」

別に何もめでたくはない。

でも、結婚を決めたのは自分だというのは事実なので、一応周りの顔を立てて愛想笑いくらいはする。

おめでとうと言われたらお礼を言う。
頭を下げる。

卒業まで後1ヶ月。
その日に、千百合は社交界の集まりに出ていた。

婚約の話はもう回されているので、皆知っている。
ついでに、夫となる保志伊織もこの場に参加している。

保志は、顔だけでなく、基本にこやかという点も幸に似ていた。

だから千百合は、幸がこの場に居たらあんな風なのかな、なんて考えて保志を見るのだが、見る度に何か笑顔の感じが違うことがまざまざとわかって、結局すぐ目を背けるのだった。

「・・・・・・」
「千百合?どうした?」
「お父様ごめんなさい、ちょっと体調が。」
「そうか。まあ、最近疲れてただろうからな。」

半分は本当だった。
卒業と結婚が同時に来ると言うことは、卒業の準備も結婚の準備も同時にしなければならないということだった。

まあ、今日の集まりでは、千百合の婚約は知られているが、主題ではない。
別に席を外しても誰に迷惑かかるわけでもないから、千百合は一時抜けさせて貰うことにした。

丁度その時だった。

バン!と大きな音がして、歓談の間の扉が開かれた先には、小刀を持った男と、人質に取られている侍女の姿があった。

「・・・・紀伊梨!」

「ううえ・・・千百合様、旦那様、奥様あ~・・・」

「動くな!動くと、この女の命はないぞ!」

可憐と忍足を誘拐し、火事の憂き目に遭わせ。
紫希と丸井を銃撃戦に巻き込んだ十手団のお鉢が、今正にというか、ある意味やっと自分に回ってきたことを、千百合は痛感した。