「ねーねー、赤也君?」
「ん?」
「あのダイヤってさー、持ってたらほんとーに超能力使えるのかなー?」
「ええ!?」
寝室に戻ると、紀伊梨は珍しく寝ないで、おもむろに言い始めた。
「だって赤也君がさ、」
「いや、例えばですって!例えば!何かこう、持ってるだけで役に立つ的なことがあるんじゃねえかな、って思っただけで。」
「ふーん・・・」
「どうしたんすか、急に?」
「おとーさんがあのダイヤ大事にしてるのって、そーいう理由かなーと思ってさー。紀伊梨ちゃん聞いたことないけど。」
「いやまあ、わかんないっすけど・・・でもまあ、もう良いっすよ。あの人らに任せてたら、出し抜かれて盗られるってことはないっしょ。」
「・・・・・・」
「・・・まだ何かあるんっすか?」
「赤也君、あれ欲しい?」
「は?」
「ほらー、何か来たばっかりの時、ダイヤ担当が良かったーってめっちゃ言ってたでしょ?なんか最近言わないけどー。」
「いや、あれは欲しくて言ってたわけじゃないですから!あれはなんつうか、俺は強いんだから、俺を肝心なポジションに付けろよっていう文句であって、欲しいからとかそんなわけじゃないんすよ。」
「ふーん。え、でもじゃあ、さっき言ったら良かったじゃん!やっぱり交代してーって。」
「いや、交代してって言ってしてもらえるもんじゃないっすよ。それにまあ、今は・・・」
「今は?」
「いや・・・」
今は正直、まあ良いかなと思っている。
ダイヤ担当にしてくれ的な気持ちがまったく0になったわけじゃない。
わけじゃないけど、別に宝石自体に興味あるわけじゃないから、ダイヤずっと眺めてるより紀伊梨と居た方が楽しいし。
それに。
「・・・・・・・」
「?ねーねー、聞いてるー?」
「・・・聞いてますよ。とにかく、俺はもう今の仕事で良いんで!」
「ふーん。えへへー、そっかそっかあー。」
「何すか急に・・・」
「だって、紀伊梨ちゃん赤也君と居るの好きだもん!」
心臓が大きく鳴った。
「・・・・・・」
「でもさー、赤也君がそんなにダイヤ好きって言うんだったら、やっぱりダイヤの役にしたげてって言った方が良いのかなーって。でも良いんだよね!良かっ・・・た・・・・」
「どうしたんすか?」
「安心したら、ふわあ・・・眠くなってきちゃった・・・おやすみなさい・・・」
紀伊梨は、半分気絶するようにパタンと眠った。
そもそも、紀伊梨は早寝遅起きの性質があるのを切原はここ数日でわかっていた。
だから今日は、夜間に水が飲みたいとか言ったり、ベッドの中でやたら話したり、えらい夜更かししてるなと思っていた。
もしかして、自分が担当から外れたがってると思って心配してたんだろうか。
(いやまあ、最初はそう言ってたから、しょうがねえんだけどさ・・・)
今更そんなこと言い出すように見えるんだろうか。
と思いながら、切原は目を閉じて体を休め始めた。
この場には2人しか居ないけど、先輩陣がここに居て今の台詞を聞いていれば、多分「言いそう」とのお言葉をいただいていただろう。
今更だろうがなんだろうが関係ない。
切原は、時間経過でなし崩しに納得するとかそういうことからすごくほど遠い。
だから、切原がもう良いと思ったのなら、それは本当にもう良いと思っているのだ。
そういうことなのだった。