「じゃあつまり、最初から賊の狙いはお嬢様だったってこと?」
「そうだよ。」
盗賊団を捕まえて屋敷に引き上げた後、紀伊梨と紫希と千百合、それから幹部以外の立海勢は改めて説明を聞いた。
「実際の予告状を見せよう。これだ。」
「・・・・一番の宝を、頂戴します。」
「うむ。これを前提に、ご夫妻に話を聞いたところ、娘が一番の宝だと仰ったのでな。」
「そこで、ダイヤだって勘違いしたフリをしてみたんだ。相手の油断を誘うためにね。」
「では、ダイヤの護衛をなさっていたのは・・・」
「無論、敵を欺くためだ。幹部の俺達がダイヤを固めなくては、説得力が出まい。」
「かといって、お嬢様の護衛をおろそかにすると、本末転倒だ。そこで、赤也を当てさせてもらった。」
切原は、強さとしてはトップレベルである一方、パッと見あまり偉そうに見えない、という特性を持っていた。
立海のなかでは一番の新参で、皆に対して敬語だし、雑用なんかもなんだかんだよくさせられる。
だから、如何にも下っ端に見られがちなのである。
案の定、賊は切原をおまけ程度の護衛にしか見ておらず、まあまあ舐めた態勢で向かってきてくれた。
というのは、幸村から一同に後から聞かされた話。
「ねえ。部外者が聞いて良いか知らないけど、彼奴、昨日からずーっと寝てるけど。体は大丈夫なの?」
「ああ、切原君にはいつものことですよ。直に目が覚めるでしょう。」
「起きたら、引き上げ準備じゃな。」
引き上げ。
その言葉に、紫希と千百合はそっと目を見合わせた。
そんな2人に、幸村はふっと微笑む。
「大丈夫ですよ。」
「「え?」」
「きっとね。」
そう言われたら、なんとなくそんな気がしてくる。
幸村は、そういう力を持っている男であった。
「何の話だ?」
「ふふっ。まあまあ、じきにわかるよ。本決まりになったら、ちゃんと話すからさ。それより皆も、積み残しの無いようにしておきなよ。」
「だってよ、ジャッカル。」
「俺じゃねえよ!ブン太だろそれは・・・」
皆が談笑する部屋から遠く、遠く離れた一角では、一番積み残しが大きいであろう人物が、今まさに目覚めようとしていた。