5周年記念企画:Princess of tennis - 4/8


とはいえ。

男子テニス部程じゃないにしても、女子テニス部だって結構な大所帯である。
流石の層の厚さの中で、新人戦の枠を取りに行くのは並大抵のことじゃない。

そして。

「・・・以上が、今年の新人戦の選抜メンバーよ。それから、染谷みどり。大場夏。桐生可憐。以上三名は、補欠として選抜します。いつ何が起こるかわからないわ。補欠だからと言って油断しないで、コンディションを整えてね。」

「「「「「「「はい!」」」」」」

可憐は補欠という形。出るとも出ないとも言い切れないポジションという結果で、新人戦を待つことになった。








「はあ・・・」

可憐は一人で帰路についていた。
いつもは誰かしら一緒に帰る人が居るが、今日はとてもそんな気になれなかった。

(補欠、かあ・・・)

補欠に選ばれるのも相当なことだ。
と、周りは皆言ってくれた。
可憐だって、もしも補欠にもなれなかったら、補欠って言うだけでもすごいと思うだろう。

ただ。やっぱり、新人戦に絶対出られるわけじゃなくて。

こういう時は、部内での自分のレベルみたいなものを実感してしまう。

「あ・・・忍足君っ。」

男子テニス部の敷地を通った時、忍足はまだ居残り練習していた。

ラリーの相手はあんなにひいひい言ってるのに、忍足は汗こそかいていても、全然顔が焦っていない。確実に、でも鋭くポイントを取っていく。

軽快なステップ。正確なショット。絶妙な裏のかき具合。

(・・・かっこいいなあ。)

そうだ。最初は純粋に、テニスプレイヤーとしてかっこいいと思っていたのだ。ああいう、人の思考の裏を読んでそこを突くみたいなのは、可憐の最も苦手とするところ。

女子とか男子とか関係なくひっくるめて、可憐にとって一番理想のプレイヤーは忍足だった。
それがいつの間にか恋に変わって、今のようにプレイを見ている時は、二重にかっこよく見える。

そうして見ている間に、試合は終わり、忍足はコートから出た。
マネージャーからタオルを貰い、さほど暑いなんて思ってなさそうな表情で額の汗を拭った時、フェンス越しにふと目が合った。

「桐生さん、もう帰るん?」
「あっ、うんっ!ごめんね邪魔しちゃってっ!」
「邪魔やあらへんで。」

忍足は珍しく、一瞬何かを言いかけて止めた。
可憐は苦笑した。何を言いたいのか想像はつく。

「・・・補欠だったよっ。」
「・・・そうなん。」
「あはは・・・ごめんねっ、せっかく勉強に協力してくれるんだから、ばっちり新人戦に出たかったんだけど・・・」
「出るかもしれへんで。まあこの場合、出れたらええなとは言いづらいけど。」
「うん・・・準備は怠らないように、って言われたよっ。」

でもなあ。と続けたい気持ちは、忍足にもわかる。プレイヤーとして。
励まされたって、補欠は補欠だ。それ以上でも以下でもない。

でも。

(・・・いや、言わへん方がええか。)

「まあ、とにかくお疲れさん。」
「うん・・・」
「頑張ったな。」
「・・・・うん。」

好きな人の前なのに。
いつもこうして、胸を張れる自分で居られないなあ、と可憐はちょっと俯いて思った。