5周年記念企画:Princess of tennis - 5/8


本当のところを話すと、可憐はちょっとだけ、安心もしていた。
悲しい気持ちの方が断然多かったが、責任という意味では、試合に出ない方が圧倒的に楽。

だったのだが。

「須川さん!」
「なるみ!なるみってば!」
「・・・っつうう・・・!」

練習中のことだった。
明日はもう新人戦、というタイミングで、D2に選ばれていた須川なるみは、ラケットを取り落として手首を抑えた。

「大丈夫・・・」
「大丈夫なわけないじゃん!」
「・・・なるみ、やっぱり今日の体育、」
「何かあったの?」
「転んで手をついたの。平気だって言ってたけど・・・やっぱり嘘だったんだね。」
「・・・・・」
「・・・どうするの、新人戦。」
「なるみ、ダブルスだよ・・・・」

皆が固唾を飲んで、時期部長である女子部員を見た。

「・・・・悠里に、D2に入ってもらうわ。」
「えっ!?」
「でも悠里はS3で、」

「S3には可憐に入ってもらう。」

可憐はラケットを取り落とすかと思った。

「・・・・え、」
「できるわね、可憐?」

できない、なんて言えるはずがあろうか。
そのための補欠なんだ。

「・・・はいっ!」
「OK!頼んだわ!皆も明日は、そのつもりで!」

にわかに回ってきたS3。可憐は生唾を飲み込んだ。









翌日は晴天であった。

しかし可憐の顔は晴れやかとは言い難い。

「可憐、大丈夫?」
「・・・・多分・・・」
「・・・負けたからって、取って食われたりしないよ。大丈夫大丈夫、」
「そういう問題じゃなくてっ!」
「・・・・・・」
「・・・ごめん・・・」

可憐は、今日が初の公式試合であった。
新人戦とは多くの者がそうなるものだが、可憐も緊張でがっちがち。

「・・・・ダメだ、私ちょっと、顔を洗ってくるっ。」
「あ、ちょっと・・・」

友人の呼ぶ声も聞かずに、可憐は皆の輪からそっと離れた。