5周年記念企画:Princess of tennis - 7/8


そしてとうとう、本番のS3戦が始まった。

「はっ!」

「えいっ!」

しばらくラリーが続き、ゲームカウント1-1。ここまではお互い、目立った動きがないが。

(でも、そろそろ仕掛けてきそう・・・きたっ!)

相手が前へ出てきた。
今までずっと可憐を左右に振ってきたから、咄嗟に対応できまいと思っているのだろう。

でも、可憐の中では、まだ想定の範囲内だ。問題は、想定できていても、対応できるかが別である事。

(この姿勢からで、相手の予想出来てなさそうなとこっていうと、あの辺に・・・でも、)

でも。いつも練習の時は、まさにそういう風に打ったショットが返されがちなのだ。
その度に可憐は、ああ読みが足りなかったかと頭を抱えているのだが。

でも、今日は違う。

(・・・ううんっ!勝てるっ!私、勝てるはずっ!)

「・・・やあっ!」

覚悟を決めて、可憐は打ち返した。


「15-0!」


「・・・えっ?」

ボールは黄色い軌跡を描いて、綺麗に相手のコートに入った。

(・・・入った?)

しかも。見間違いじゃなければ、相手は明らかに逆方向に走ったような。

「・・・・」
「レディー・・・・レディー!桐生選手!」
「ああっ!は、はいっ!」

慌ててサーブの準備をしながら、可憐は心の中に、むくむくと希望の芽が育つのを感じた。

(・・・もしかして、もしかしたら、本当に、)

今日は勝てるかもしれない。






「ゲーム氷帝!4-2!」


「おー!勝ってんじゃねーか、しかも結構上手い感じで。」
「上手やろ、あの子。」
「あれ?侑士知り合い?」
「・・・まあ、少なくとも友達やで。去年同じクラスやったし。」
「へー・・・お、また入った。」

(やっぱりな。)

可憐が、なぜあんなに自信がないのか。
それは、部活でほとんど勝てないからだ。
では、なぜ勝てないのか?

それは、部内では可憐の思考の深さを皆知ってるからである。

一歩外に出て、可憐のことをろくに知らない人間が相対すると、まあこんなもんだ。
当たり前のように裏をかかれ、当たり前のようにリードされる。

忍足は知っていた。可憐の優秀さも。公式試合ー--普段試合をしていない人相手にこそ強いことも。


ずっと見ていたから。