試合終了後。可憐は運動公園内を走っていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・あれっ?ええと、ええと、」
「桐生さん。」
「あっ!忍足君っ!
勝った!勝ったよっ!私、勝てたよっ!」
可憐はあのあと、さらに1ゲームだけ落として、6-3で勝利した。
忍足は喜びではちきれんばかりの可憐に、優しく微笑み返した。
「見てたで。公式試合初勝利おめでとう。」
「ううんっ!忍足君が「勝てるつもりで」ってアドバイスくれたからだよっ!・・・そういえば、忍足君、どうして勝てるってわかってたのっ?実は、私も勝ったことは勝ったけど、勝てた理由がよくわかんないんだよねっ。何か、急にショットが入る様になったっていうかっ。」
どうやらわかっていないらしい可憐。忍足はちょっとだけ声を出して笑った。
「せやなあ、まあ細かい事はまた今度教えるとして。ざっくり言うたら、テニス部は皆桐生さんのテニスに慣れとるけど、部外者はちゃうから、ていう理由になるやろか。」
「ふ・・・ふうん?そうなのかなっ?忍足君は、どうしてそんなことわかるのっ?」
「そらまあ、いっつも見てるさかい。」
「・・・・え、」
いや。これはきっと、部活の敷地がお隣だからとか、何かそういう理由だ。そうに違いない。うん。
でも見られてたことには変わりないなと思うと恥ずかしくて、可憐はちょっと顔に熱が集まるのを感じた。
「可憐!」
「えっ?ああ、瑠璃っ!」
「こんなとこに居た・・・あ、忍足君どうも。」
可憐の友達は、皆忍足のことを知っている。
テニス部のよしみというよりは、可憐が忍足を好きだからである。
「忍足君、可憐の試合ずっと見てくれてたよね?あっち行かなくて平気?」
「え、そうなのっ!?」
「もうそろそろ呼ばれるけど、今は平気やで。相手が前の試合まだ決めてへんし。」
「ふうん。まあ、それはそれとして試合どうだった?良い感じだったでしょ。」
「る、瑠璃っ!」
「せやな。練習の成果が良う出とって、ええ試合やったわ。」
「ね、私もそう思う。惚れても良いんだよ?」
「瑠璃ってば、もうっ!」
あはは、なんて笑う友人に、忍足はやっぱりわかりづらい微笑を返した。
「惚れてもええて言われたら困るなあ。」
「ほらあっ!だから、」
「結構前から惚れとるさかい、今更許可の方もろても。」
え。という声なき声は、ゆーし!と向こうから呼ぶ声にかき消された。
「ほんなら、呼ばれとるしそろそろ。・・・ああ、せやった。」
「え、」
「返事は別に急がへんで。」
その返事、という単語に、幻聴じゃないよと太鼓判を押された気がして、可憐は今度こそちょっとどころではなく真っ赤になった。