Camp school:Mountaineering 1 - 1/5



バスは橋を滞りなく渡り、江の島についてもまだ止まらない。
ホテルがある山の、山頂とは言わないが中腹まで連れて行ってくれるので其処で昼食となる。

『えー、それでは此処で13:30分まで自由行動とします。入ってきたゲートの外には行かないで、時間には戻ってくるように。』

じゃあ解散、と言われるが早いか散らばり出す生徒達。
全クラス此処に集まっているので、正にごった煮状態である。

とはいえ。

「紫希ー!千百合ー!こっち来て食べよー!」
「あっ、はい!」
「ん。」

紫希も千百合も、別にお互い以外クラスに友達居ないわけではない。
こういう時は基本的にクラスの友達が優先である。

「結構高いんだ、此処。」
「見晴らしが良いですよね。」
「ね!もっと暑いかと思ったけど、風も良い感じに吹いてるじゃん!」
「今日晴れてるしね。お天気で良かったね。」

クラスメイトの江野桃美、堀江美嘉と話しながら弁当を開ける2人だが、一同の視線はどうしても風景に集まる。
夏の江の島の景色。予報ではずっと晴れだし、正に林間合宿日和である。

「これでホテルが山じゃなきゃね。」
「あ、そっか!千百合、虫苦手なんだ・・・」
「えー、でも結構きついわよー?こういう所のホテルって、Gは言い過ぎだけどほら!蜘蛛とかは出そうじゃん?」
「出そうとか言うな、飯がまずい。」
「やーん、怒ってるー!」
「まあまあ・・・山とはいえ、人がいっぱい居ますから虫も早々出ては来ませんよ。きっと。」
「じゃ、虫じゃないものは?」
「え?」
「ほらあ、ね?もう夏だし?」

にや、と笑みを浮かべる友人に、紫希はちょっと目を逸らして千百合は溜息を吐いた。

「やーだ、もう!桃美ってばすぐそういう事言うんだもん!」
「たはは!美嘉はこういうの嫌いだもんねー?紫希も苦手でしょ?」
「あ、あんまり得意では・・・」
「千百合・・・まあ千百合は平気かー。」
「信じてないし。」

そう、千百合はこういうのを一切信じない。
別に嫌いなわけじゃないからエンタメとしてはそこそこ楽しむが、本気になってびびれと言われるとどうも。

「良いの、そんな事言っちゃってー。精霊さんも出て来ないわよー?」
「あっ、そっか。紫希達、明日の夜は精霊を探しに行くんだったね。」
「はい、行ってきます。」
「あーあ、良いなー!私も行きたかったなー。」
「白々し。」
「む!白々しいとは何よー!」
「えー、でも私もそう思うー。桃美って、精霊に興味あるような感じじゃなくない?」
「あは、ばれた?いや、確かに精霊には興味ないけど・・・」
「ほら。」
「最後まで聞いてー!精霊には興味ないけどさあ、ラブロマンスには興味あるんです!」
「・・・・?ラブロマンス?ですか・・・ああ!あの精霊の恋の行く末が、桃美ちゃんは気になって「「ないない。」」あ、あれ?違うんですか?」

そんな乙女な友人じゃない事を、千百合と堀江は知っている。
江野はこう見えてリアリスト寄りなのである。そんな居るかどうか分からない精霊の恋の行方より、もっと気にする恋の行方があるだろう。

「ちっちっち。私の言ってるのはそうじゃなくてー、今!この時の恋って奴よ。」
「?」
「だってね紫希、考えてもみなさいよ?夜よ、夜!」
「はあ・・・」
「ホテルを抜け出して、夜!ボーイズ&ガールズ!ひと夏の冒険!そりゃ、甘酸っぱい恋の一つや二つあってもおかしくないって!」
「・・・え?うん・・・え?ええと・・・え?」

(あれ?付き添いで新海先生も来るんだよね?)
(忘れてる忘れてる、桃美だもん)

リアリストだけど、ちょいちょい抜けている。それも江野の特徴である。

「まあ千百合はもう彼氏が居るから話が変わって来るけどー。私としては、ここらで紫希も彼氏の1人や2人作っても良いんじゃない?って思うわけですよ。」
「嘘吐けよ。」
「はあ!?」
「そんな事になったら、絶対桃美騒ぎ出すよー。何処の誰だー、とか先を越されたー、とか。」
「しないわよ!なんなのよあんた達2人してー!」
「まあまあ桃美ちゃん・・・」
「よし!紫希、こーなったらなんとしても彼氏を作って貰うわよ!」
「えええ!?」
「そんで、私が騒がない大人の女だって千百合と美嘉に証明するんだから!」
「い、いえあの・・・」
「頑張って来て!ほらあの、隣のクラスのさあ!丸井とかで良いじゃ、あがあっ!」

容赦の無い千百合の一撃が入り、江野は撃沈した。

「も、桃美ちゃん!」
「良いって良いって。」
「でも、」
「うーん、でもこれは桃美が悪いと思うし。」
「えええ・・・」

「ふふっ。楽しそうだね。」

声に振り向くと、昼食を終えた柳と幸村が立っていた。

今しがた4人から3人に減ったこの状況を見て、楽しそうと爽やかに言える辺りが流石と言うかなんというか。

「あ、幸村君と柳君。」
「やあ。堀江さん、だったね。ちょっと2人を借りても良いかな?」
「あ、全然!桃美もすぐ復活すると思うし。」
「何。何かあった。」
「見せたい、というか見ておいた方が良い物がある。他の人間も誘って、暗くなる前に見やすい所から見ておいた方が良いだろう。」
「分かりました。」

多分、精霊探しの為の準備であろう。
見ておいた方が良い物なんて、そのくらいしか思いつかないし。

「それから、もう1つなんだけれど。」

幸村がちょっと眉を下げて笑った。

「棗が、何処かに行ったらしくてね。見てないかと思って。」
「そ、それは・・・」
「見るわけないじゃん。」

そんな足取りの掴みやすい奴じゃない。
此処に居る皆がそれをよーく知っていた。