テニス部とビードロズを合わせたメンバーの中で、ぶっちぎりの早起き人間。
真田弦一郎、12才は、目覚まし一つ鳴らすことなく上体を起こした。
(む?此処は・・・そうか、昨晩は宿泊したのだったな。)
スマホを見ると、時刻は4時。
いつも通りだ。朝稽古の時間。
真田は幸村と柳を起こそうと、浮かしかけた手を途中で止めた。
(・・・この場合、起こさん方が良いのだろうか。)
そもそも今日は合宿でもなければ学校行事でもない。
完全にプライベート。
修学旅行の時でさえ幸村と柳を起こした真田だが、今日くらい・・・というか、今日は幸村達だって他に優先したい事とかあるんじゃないのだろうかと思う。
(しかし鍛錬を怠るのは・・・いや!そもそもの話をするのなら、俺達がビードロズの鍛錬を邪魔したから今詫びをしているのであって・・・つまり、今優先するべきは、俺の都合ではなく彼奴らの都合という事になる。)
となると、やっぱり此処に居た方が良いんだろうか。連れ出したりしない方が良いんだろうか。
良いんだろうな、やっぱり。
「・・・・仕方あるまい。」
こういう事は、どんなに毎日欠かさず朝稽古したいと思っていても、年に数回はどうしても発生してしまう。
今日がその年に数日の一日だ。
真田は布団を被りなおした。
どうせ起きたなら起きていた方が良い気もするが、自分が人並外れて早起き過ぎることは知ってはいる。家主を起こしてはいけない。
真田も大概だが、柳も早起きという意味では大概である。
いつも判を押したように、同じ時刻に静かに目を開け・・・そのまま少しじっとしている。
眠気が一度完全に冷めないと、どうも上体を起こす気になれない。
「・・・どうも魘されていると思えば、これか。」
さっきから眠っている桑原がむむむ・・・と苦しそうに時々呻く。
何かと思えば、カーテンが閉まり切っていないのだ。朝日が思い切り桑原の目元を直撃している。
苦笑して柳が閉めなおしてやると、桑原はまた穏やかな顔になって寝息を立て始めた。
(・・・5時か。)
まあ。
今日は起きた所で、いつもの事がいつものようには出来ないから。
柳はまた布団に潜って眠る姿勢に入った。
二度寝とかいつぶりだか、覚えていない。
いつも早起きというわけではないが、特定の条件が揃うと早起きになるタイプの人間が居る。
紫希はもろにその通りで、早起きしてあれやらないと、と緊張しながら眠るとそのように起きる。
「うー・・・ん・・・はあ。」
一度伸びをしてスマホを見ると、5時。
よし。起きよう。
そろりと立ち上がって、ノートとペンを持って一階へ。
ダイニングキッチンに着くと、ノートを開いて座る。
さて、朝食を考えねばならない。
皐月に任せても良いのだが、お世話になってるんだしと思うとやはり任せきりには出来ない。という、およそ中学1年生らしくない発想の元、紫希はもう何度か経験のある五十嵐家にての朝食作りを始める。
(確か卵は昨日まだあったのを見ましたし、何かスープ類の物を・・・ああ、昨日のうちにご飯派の人とパン派の人を聞いておけば良かったです・・・)
テーブルと冷蔵庫を往復しながら、朝食の構想は結構難儀していた。
真田や柳レベルとは言わないが、常に早起き勢の中に名を連ねる者が実はまだ居る。
それが丸井である。
毎日毎日弁当と自分を含む子供3人の朝食を作っている丸井は、その時間の確保のため基本早起きなのだ。
今日もそのように目が覚めた。
今日は朝食も弁当も要らないと知っていたからアラームとか何もしていなかったけど、体内時計に起こされた。
「・・・腹減った。」
眠いしもう一回眠っても良いのだが、眠っても空腹は直らない。
空腹をどうにかしたいのなら、自分で起きて自分の面倒を見るしかない。それを丸井はよくよく知っていたので、欠伸をしながら階段を降りた。