Camp school:Mountaineering 1 - 2/5


「あだだだ・・・く~、効いたわさっきのは・・・」
「あ。桃美が起きた。」
「起きてたわよ、おっかなくって動けなかっただけで。もー、あんなに怒る事無いのにー。」
「うーん、でも私的にはやっぱさっきのは桃美が悪いよ。千百合が丸井君の話になるとちょくちょく機嫌悪くするの分かってたでしょ?」

江野も堀江も、紫希達と友人でいるので自然テニス部やビードロズの事にはちょっと詳しくなる。
なんとなく察せられる事も多くなり、丸井が絡むと千百合の機嫌が時たま降下するのもその一つだ。

「えー!でもなんでもない時もあるじゃないのよさー。どうも分かんないのよねー、千百合の怒りポイントって言うか沸点っていうか・・・」
「え。」
「え?」
「桃美、真面目に分かんないの?本当に?冗談じゃなくて?」
「ちょ、ちょっとちょっとー!何それ、私はいつでも真面目よー!」
「えー、とても真面目には見えないよ・・・」
「なんですってー!」

見てて本当にわかんないんだろうか、と堀江は思う。
千百合が丸井の話題を出されてイラつく時と言うのは、紫希も同時に話に絡む時である。

要は姉心的なものだ。
紫希と違って大人しくもなければ控えめなわけでもない丸井に、いつか紫希が悲しい目に遭わされるんじゃないかと千百合は心配しているわけなのである。

自分だってそう敏感な方とは言えないけれど、友人がこんなに鈍かったとは・・・と口には出さずに、堀江は弁当を食べ進める。

「あっ!」
「ん?」
「分かったかも、私。あちゃー、やっちゃったなー・・・千百合の事だからどうせ知らないと思っちゃったんだけど、知ってたかー。」
「えっ!ちょ、ちょっと待って!桃美、何の話してるの!?」

何か自分の全然知らない話の気配を感じた堀江は、思わず身を乗り出した。

「あれ?美嘉知らない?噂になってるじゃーん。」
「何が?何の?」

「丸井ってあれでしょ?G組の、新しくマネジになるっぽい女子に一目ぼれしてるんでしょ?」

しまおうとしていた箸が、堀江の手から滑り落ちた。

「・・・え、」
「あ、噂よ噂!やーねえこういうのはさ、話半分に聞いて面白がるもんじゃん?誰も本当かどうか確認取ったわけでもないんだしー。」
「え、でも・・・噂っていうのはほら、何かしら根拠になるような事があって流れるもの、じゃない・・・?」
「あー、火の無い所に煙は立たずってか?まあそりゃあそうね。」
「じゃあ、」
「でも、火の無い所に水煙とも言うじゃない?」
「う・・・」
「結局さ!この手の噂話っていうのは、正体が火なのか水なのかなんてどうでも良いもんなのよ。其処に!煙が!あります!それだけで良いのよねん。」
「・・・それはそうかもだけど。」
「まあ私らにとっちゃ近い話題だから気になるのは分かるけどさ。でも噂話なんていい加減なもんなんだから、振り回す事はあっても振り回されるもんじゃないわよ?」
「そうは言っても・・・」

江野は出来るのかもしれないが、こういうのはやっぱり得意な人と不得意な人が居るのであってさ。自分はどっちかというと不得意なのであってさ。

ついでに言うと、多分紫希もどっちかというと不得意なのであって、さ。

「でも、千百合が振り回される側だったとはね!いやあ、失敗失敗・・・今度からは気をつけないと。悪い事しちったなー。」
「あ、ごめん。それは関係ないと思うよ?っていうか、そもそも千百合はそういう噂とか知らないと思うな・・・」
「えっ!?」