Training camp – in Hyoutei gakuen -:How to grow - 2/7


「芥川くーん・・・」
「zzzz・・・・」
「芥川君っ!」
「zzzz・・・・」
「はあー・・・・」

今日の勉強日でも、グループ別システムはそのまま動いている。
本日、可憐は芥川と一緒のグループだ。

とは言ってもこれじゃあ。

「可憐どう?起きそう?」
「全然・・・」
「ううんどうしようかなあ。」

机に突っ伏して健やかに眠る芥川。
辛うじて道具一式持ってるのが救いといえば救いなのか。

まあ見ようによってはやる気はあるのだろう。
やる気だけは。
体が追いついてないだけで。

「揺するとか・・・」
「そのくらいで起きないよっ!」
「だよねー・・・とはいってもあんまり過激な事は出来ないし。」
「選手の体だもんねっ。やっぱり軽くでもぶったりとかはちょっとっ。」
「向日君とか宍戸君に起こすところだけは頼んでみるとか?」
「それもあんまり解決になってないっていうか・・・確かに起きるんだけど、一瞬のことだしっ。」
「またすぐ寝ちゃうもんねー。都度都度お願いしてたら向こうも何も出来ないし、うーん・・・」

(どうしたら良いかなあ・・・・)

この場合困るのは持続力の方だ。
起こす所まではどうにかなる可能性が高いが、その後また間もなく寝てしまうのが普通。そこをどうにかして本人に俺!起きてる!頑張って勉強する!なテンションになって貰わないといけない。

「・・・・よしっ。」
「?」
「ちょっと、上手くいくかわからないけどやってみるよっ!」
「何を?」








「・・・テニスをしてくれ?」
「そうっ!芥川君とっ!」
「急に何の話だ?」
「そう言えば、ある程度は起きてくれると思うんだっ!ちゃんとしないと損するよっていうより、ちゃんとしたらお得だよって言う方が効果があると思ってっ!」

可憐が思うのは、芥川の性格的にペナルティはさして意味がなさそうという事だ。
罰を与えようと説教しようと、芥川は寝る。寝るもんは寝る。眠いから。
そうなると残された手段としては、ご褒美で釣るしかない。そして芥川が起きていられるようなご褒美というと「跡部との試合」くらいしか可憐は思いつかなかった。

「どうかなっ?いつやるのかとか、そもそもたった一人のためだけにそういう事して良いのかとか、色々あるけどっ。」
「・・・いや。確かにジローを起こしておこうと思うなら、まあ取れる手段はそのくらいだろうな。とはいえ・・・」
「?」
「いや、何でもねえ。」

ぶっちゃけ、芥川に対してそれほど躍起になって宿題片付けさせる意味はあるのか?と言われると疑問である。どうせテストの時寝てるのに。

ただ、それはそれとして、そうかといってあまり放置も出来ない。部の規律に関わる。

「よくわかんないけど、良いんだねっ?」
「ああ。」
「わかった、有難うっ!じゃあそれで起こしておく方針でーーー」
「それはそれとして、桐生。」
「うんっ?」
「お前、ジローをどう思う?」
「へっ?」

どう。どうって。

「・・・どうって、どうっ?」
「態度的な話だ。忌憚のない意見を言ってみろ。」
「ああ、ううん・・・」

まあ。
嫌いじゃないけど。
寧ろ好きだけど。
友達だけど。

でもだな。

「・・・正直、良い態度とは言えない・・・かなっ。」
「だろうな。」
「ただ、それはそれとして実力は本物だって思う・・・っていうか、見た事はほぼないからそう聞いてるっていう程度だけどっ。だから戦力になるとは思うし、芥川君自身もテニスを侮ってるとかそういうわけじゃないと思うし、なんだかんだちゃんとやってる時はそれなりに楽しそうだし、けど・・・ううん・・・び、微妙な話だけど・・・」
「そうか。」
「ご、ごめんねっ!何かあんまり、ハッキリした事言えなくてっ!」
「いや、良い。実際、部員はお前みたいにグレーに思ってるやつらが大半だろうからな。」

芥川慈郎という男は、ある意味極端すぎる二面性があるのである。

この厳しい部活の中、大半以上を寝て過ごしてほぼ練習に参加しないという行いは、ハッキリ言ってかなり見咎められるべき事だ。
ただ反面、芥川のテニスプレイヤーの力量は200人を越える部員の中でもトップクラス。実力至上主義という話をするなら、真面目に練習してる勝てないプレイヤーより、毎日ぐーすか眠りこけていても勝てるプレイヤーならそれで良いという見方も出来なくもない。

正直に言うと跡部でさえも芥川という人間は特殊すぎて扱いに若干手を焼いている。
部の中でどういう位置づけにおくべきなのか。
跡部個人の考えと、部長としての考えと、芥川本人の考えと・・・なんて考えては様子見という結論に落着き、またこうして折に触れて浮上して、その繰り返し。

(やる気がないわけじゃねえんだがな・・・)

ただ。
やる気以上に睡魔に弱くて。

「時間を取らせて悪かった。兎に角、忽ちは頼んだぞ。」
「はいっ!」

可憐は身を翻した。