「ただいまっ!」
「お帰りー。」
「何してたの?」
「ちょっと秘密兵器を調達にっ!」
「秘密兵器?」
「うんっ!ようし・・・芥川君っ!」
「zzzzzz・・・・」
「起きて芥川君っ!取りあえず一瞬で良いから起きて、話を聞いてっ!」
少々乱暴だがいつにない強さで揺さぶると、漸く芥川は目を開けた。微かに。
「んにゅ・・・」
「芥川君っ!今日は勉強日だよっ!せめて宿題は終わらせないとっ!」
「・・・・うん?うぅん・・・」
「・・・今日はなんと!ちゃんと終わらせられれば、ご褒美に跡部君が試合してくれるよっ!」
「ぅん・・・えっ!?」
男子にしては大きめの目をかっと見開いて、がば!と上体を起こす芥川。
よし。いける。
「ほんと!?跡部が試合してくれるの!?」
「本当ですっ!ちゃんと約束したし、なんなら跡部君に直接確認してくれても良いよっ!」
「わああああ・・・・!」
「でも!ちゃんと今日中に課題が終わればだからねっ!寝ちゃ駄目だよっ!」
「うん!うん!俺絶対終わらせる!絶対寝ない!頑張っちゃうC!」
よっしゃー!と叫ぶ芥川。周りからは口々に彼奴あんな大きい声出せたんだ・・・とか言われてるが、本人は舞い上がって聞いちゃいない。
「本当に良いの?可憐。」
「うんっ。跡部君はそれで良いって言ってくれてたし、正直他に方法も見つからなくてっ。」
「確かにねー・・・」
「それしかないか。何かちょっと、やる事は皆と同じなだけに特別扱い感出ちゃうけど。」
「どうしようもなくない?」
それは可憐もちらりと思った。
ただ、特別扱いというなら芥川は普段から大分特別扱いされているので、今更なあ・・・という空気が部に漂っている事は否めない。
『グレーに思ってる奴らが大半だろうからな。』
跡部はさっきそう言ったが、実際可憐の感じる所としてはグレーはグレーでも結構黒寄りのグレーである。
可憐自身はそうは思わないが、それはそれとして部全体を見渡した時にどちらかというと良くは思ってない人間の方が多いだろう。という雰囲気はマネジとして活動していて、確かに感じるのだ。
まあそれも無理からぬことと言えばそうではある。日がな一日寝転けていて部活しないのが褒められる事だなんて絶対あり得ないからだ。
実力はあるからと見逃して貰ってる側面も大きいが、余りにも起きていなさ過ぎて「彼奴本当に強いの?」とか思われているのも事実。
(芥川君、本当にこのまま3年間過ごすつもりなのかなあ・・・)
友人としても同じ部の仲間としてもそれは果たしてどうなんだろうかと思うが、こればっかりはどうしようもないのも可憐は分かっている。
結局のところ、こういう事は本人以外頑張れない。
やる気を出すのも、走り出すのも、周りが出来るのは手伝いだけ。
スタートを切れるのはその人。だけ。