「・・・・・」
柳生は心臓が高鳴っているのを感じていた。
(あれでもう、5ヶ所目になる・・・!)
視線の先には、反対側のバルコニーで補助スピーカーを出している生徒会メンバー。
しまっておいた追加のライトを配線した瀬戸から始まり。
照明用のカラーフィルムを持ち出す者、追加のスピーカーを出す者、スポットの位置を調整する者等、皆事前の予定に無い動きをしている。
一体これはなんなんだと柳生は考えに考えていた。
目的は辛うじて直ぐ分った。
目下、1階の舞台袖でバタバタしている3人・・・いや、姿が見えない1人を含めた4人組。
(ビードロズ、ですね。間違いない。)
今見ている不可解な事象は、紀伊梨に説明を求めた時の初期のライブ演出、そのまんまである。
これはビードロズ、若しくはビードロズに味方している誰かの仕業だ。
しかし、柳生はメンバーを捕まえて話を聞く気はなかった。
(如何せん気づくのが遅れましたね・・・瀬戸先輩を見た時に見当がついていたならばまだしも、もう15分後には開演、メンバーの3/4が楽器の準備に追われている状態ではとても。)
ビードロズ絡みで起こっている事。
ならばビードロズに話を聞かないと、と即決するほど柳生は脳筋ではなかった。
だって、通路越しに起こっているあの光景を見ろ。
実際に行動を起こしているのはビードロズの誰かではない。
身内である生徒会である。
もし、これがビードロズに断りなく独断で手伝っている誰かの所為ならば、今ビードロズを問い詰めるのは最悪の選択だ。
向こうからしてみれば企画書の再提出までしたのに、ライブの直前で謂れの無い事で責められる事になる。
演奏に支障をきたしかねない。
(不幸中の幸いにも、今の所その他のプログラムの進行に、余波が出ている気配は見受けられません。)
大丈夫。
歓迎会そのものが破綻になるという事は避けられるだろう。
落ち着いて。
「・・・想像がついてしまいますが、一応行きますか。」
柳生はひとりごちて歩き出した。
通路を進み、扉を開けてさっき見えた反対側の通路への道を行こうとして。
2階の機材室に一度出た時、正にさっき補助スピーカーを出していたメンバーとぶつかりかけた。
「おっと!」
「曽根崎先輩・・・」
「悪い柳生!」
「いえ、私は平気ですが。」
「そっか?じゃあ、」
「それはそれとして、お待ちください。」
引きつる曽根崎の顔。
「・・・なんだ?俺、次の準備が、」
「何か隠していらっしゃるでしょう。」
「い、いや?」
はあ、と柳生は溜息を吐いた。
「曽根崎先輩。」
「・・・・」
「脅されていますね?」
曽根崎は、堪らないという顔で天を仰いだ。
「・・・・・・」
「ご安心を。どのような理由でかは存じませんし、貴方を責める気もありませんので。」
「・・・・・・」
「ただ、誰にどうしろと言われたのか聞きたいのです。」
このくだりももう4回目である。
瀬戸にこそ聞きそびれたが、おそらく瀬戸も似たような状況だろう。
「・・・すまん、柳生。言う事を聞かないと、俺の好きな子に勝手に告白してやるって言われて、それで・・・・」
「曽根崎先輩、良いんです。先程言った事は嘘ではありません。事の大小に関わらず、先輩にとっては重要な事。理由がどうのという気はありませんから。ですから、質問に答えて下さい。」
そうは言うものの、半分以上は確認作業だった。
今迄聞いた4人、皆口を揃えて同じ事を言うのだから。
「・・・・生徒会長が、そうしろって。」
やはりか。
「本当だ!信じて・・・」
「ああ、疑ってはいません。ご安心を。それでは、私は会長を探すとします。これにて。」
何せ他にも同じ事を言う人間が居る。
その点に疑いを抱いては居ない。
(・・・しかし、会長が主犯である、と決めつけるのは早計ですね。)
その会長とても。
或いは。