Overnight party 4 - 2/7


「ええと、玉ねぎが後3玉あって・・・」

紫希の朝食づくりがそろそろ構想ではなくて行動に差し掛かろうかと言う時に、階段を降りる足音が聞こえた。
まあ、あれだけの人数が居るわけなので、誰かが降りてきても別に不思議ではないといえばない。

ただ、やっぱりイメージとしていかにも早起きそうな真田とかかなと思ったのは事実だった。

「お。よ、おはよ。」
「・・・!丸井君、おはようございます・・・早いですね、まだ5時半ですよ。」
「それはお前もじゃねえの?」
「私、朝食があるので。」
「朝食・・・」

パジャマのままエプロン。
広げられたノートに料理名。

作るのか。今から。全員分。
ほお・・・なんて気分で丸井は見ているが、紫希は今朝食どころではなくなってしまった。

「あ、あの・・・丸井君・・・」
「ん?何?」
「あの、千百合ちゃんから聞いて・・・」
「???何が?」
「あの・・・すみませんでした!昨日運んで頂いたとかで、あの、その、本当にその、なんてお詫びをすれば良いか・・・」
「運んで・・・ああ。ああ、ああ・・・うん、あー、うん・・・」

思い出した。
色んな事を芋づる式に。

いや、運んだこととか丸井的には別に大した事じゃないのだ。さして重くもなかったし。
そんな事よりだ、そんな事よりもっと気になる問題があった。
でも気にしたくないから、あまり話題にしないで欲しい。

昨日棗に引き起こされた風呂の話題と一緒だ。
嫌だったというとアレになるが、嫌じゃなかったと言ってもアレになる。恥ずかしいのでコメントそのものを差し控えたい感じ。

「まあ、ほら!別に気にすんなよ。大した事じゃねえし。」
「でも、本当にご迷惑をおかけして、」
「・・・・迷惑だった方が楽だったかも。」
「え!?」

本物の迷惑だったら。
例えば寝ぼけてひっぱたいてきたとかだったら、お前昨日こんな事してたんだぜ?ってばらして、今日はもう笑い話に出来るのに。

そうじゃないから何て言っていいか分からない。
笑って済ませることも出来るけど、笑って済ませたいわけでもない。

分からない。
どういう言葉にすれば良いのか、割と真面目に分からなかった丸井は、取り合えずやや強引にでも話題を進めてしまうことにした。

「え、あの、あの、」
「いや、良いから良いから。それより!今言ったよな、お詫びしますって。」
「え?」
「言ったろい?」
「は、はい!何でもします、私に出来る事なら・・・」
「よおし、言ったな?何でもはい、って言うな?」
「は・・・はい!」

丸井はニッと笑った。
きた。言質取ったり。

「そんじゃあ、お詫びな。今日の朝飯。」
「はい・・・あ。何か、好きなメニューがありますか?」
「じゃなくて。」
「なくて・・・?」
「一緒にやらせて?」
「・・・え?」


「俺、一度お前と一緒に料理したかったんだよ。」


こんなに沢山食べさせて貰ってるのに。
一緒に色々食べた事もあるのに、食べ物の話してるのに、一緒に作ったことは今まで一度もない。クラスが別だから、修学旅行だって家庭科だって、紫希と一緒になる事は絶対にない。

丸井はそれを残念に思っていた。
やってみたかった。
きっと出来ると思っていたし、きっと上手くいくと思っている。

「ま、今回お前が嫌かどうかは関係ねえからな?」
「あ、」

そこに置いてあった、昨日使った棗のエプロンを、実に慣れた手さばきでちゃっちゃっと装着する丸井。

「そこに書いてある奴を作んの?」
「え!あ、ええと、でも、幾つか材料とかが足りなくて、どうしようかと思って・・・」
「ふうん・・・」
「・・・野菜は、ここにグリーンピースを入れても良いかなと思うんですけど。」
「あ!良いじゃんそれで!その発想は俺しねえけど、美味そう!」
「そう、ですか・・・?」
「おう。あ、そうそうそれと、これとこれは合わせたら1品になるんじゃねえ?」
「これと、これ・・・混ぜるんですか?」
「んー、なんて言えば良いんだろうな、包む?生卵の段階で中の方に入れといて、そのままレンチンして、」
「美味しそうです・・・」
「だろい?美味いぜ、俺これ好きなんだよな。後他に・・・っつうか。」
「はい?」
「お前、和食と洋食両方作る気で居たのかよ?マジ?一人で?」
「ちょ、ちょっと大変かなとは思いましたけど、でもやっぱり朝は拘りのある人も多そうなので・・・」
「そうだけどさ。」

でもそんなもん、うるせえ!がたがた言ってないで、出されたもん黙って食え!と言えば全員食べるだろうに。

「それに・・・」
「それに?」

「・・・朝ごはんが美味しいと、何だか一日良い事があるような気がするんです。だから、なるべく皆に好きなものを美味しく食べて欲しくて・・・」

そう言う紫希の顔はとても優しかった。

ずるい。
それを言われると、もう食べるの大好きな丸井には言い返せない。
御飯が美味しい、それが毎日の希望になる事を丸井はよくよく知っている。

「・・・そうだな。」
「あ、で、でも、それなりに大変なのは大変ですから、基本的に任せてもらっても、きゃっ!?」
「だーめ!一緒にやるんだよ、一緒に。」

でこトンを食らった。
いや痛くないけど。

「おし、じゃあ纏まってきたところでやるか!」
「は、はい!」
「あ、そうそう。お前、好きなのは?」
「え?」
「朝飯、何が好き?」

好きな朝食。自分の好きなもの。

「・・・・ミニトマトが入ったココットがあると、嬉しいです・・・」
「OK!じゃあそれは俺が作るから、ポテトサラダは頼むぜ?」
「ポテトサラダ?」
「俺が今日一番食べたいやつ♪」

言いながら丸井は顔が緩んできた。

ああ、良いな。
楽しいな。

いつも自分で作ってばかり。まあそれはそれで、自分の好みになるから良いんだけど。
でも今日は違うんだ。人の作ったのが食べられるんだ。
あの子がやってくれるなら、美味しい事はお墨付きを貰ってるようなもの。

「くれぐれもシクヨロ!」
「・・・はい!」