Overnight party 4 - 6/7


「既に暑い・・・」
「ふふ。そうだね、最近は朝でも夜でも気温が下がらないね。俺も小さい頃は平気だったけれど、最近は眠る時も時々冷房を点けてるよ。」
「えー、私時々どころか6月から毎日だけど。」

幸村家に着いた2人は、そこそこ以上に広い庭の花壇に水撒きをする。
角度によって綺麗に虹が出て、如何に今の時点で日差しが強いのか伺える。

「お腹も空いてきた。」
「そうだね、朝食が楽しみ・・・そうだ。そういえばさっき。」
「さっき?」
「ほら、丸井と春日が作ってくれてただろう?楽しそうだったね。」
「ああ、それは私も思った。朝食作るだけであんな楽しそうに出来るもんなんだって。」
「あはは。まあ、2人とも作るのが好きだから。単純に共同作業が楽しい以上に、趣味要素があって猶更楽しいんじゃないかな。」

千百合も、幸村と何度か食事を作った事はある。
それこそ小学校の家庭科なんかもそうだが、いつも紫希ばかり悪いからと朝食作り役を買って出たりした事も何度か。
その時もとても楽しかったが、あの2人程盛り上がれそうかと言われると多分ちょっと難しい。

「・・・何かごめん。」
「え?何が?今何か、謝るような事があったかい?」
「いや、私無趣味だから。」

幸村は一瞬きょとんとして。
その後すぐおかしそうに笑った。

「あはははは!良いんだよ、そんな事。俺は別に、同じ趣味の人を恋人にしたいわけじゃないから。俺だって、楽器の趣味があるってわけじゃないし。」
「でもどうせならさ。」
「それならそれで今と違った楽しみはあったかもしれないけれど、でも些末な事だよ。それよりも、俺は趣味でもないのにこうして付き合ってくれることの方が有難いというか・・・嬉しいかな。一緒に居たいって思ってくれてるって感じるから。」
「・・・・・そ。」

それはまあ。実際その通りだし。
千百合はちょっと麦わら帽子を深めに被った。

「それに・・・・」
「それに?」
「俺は特にここ最近、恵まれてるなあってよく思うんだ。千百合達は皆テニスをしないけど、テニスをする俺の事をわかってくれてるのは、凄くよく分かるから。」

昨日のような事がなくても。
例えば時間が殆ど部活で潰れる事とか。
強くなればなるほど巻き込みで注目を浴びてしまう事とか。
何も知らない外野にやいのやいのBigなお世話を焼かれる事とか。

千百合はそういうのが大嫌いだが、千百合でなくてもこれが愉快な人は居ないだろうに、親友も恋人もいつも自分を暖かく見守ってくれる。

「だから、いつも有難う。千百合が傍にいてくれて、俺は本当に嬉しいよ。」

そう言って夏の日差しに照らされて笑う幸村は、とびきり綺麗で眩しかった。

(・・・別に何もしてないのに。)

そう。
別に何もしていないのだ。千百合自身が自覚する所では。

幸村はよくこうして居てくれるだけで嬉しい的な事を言うけれど、千百合的にはそれは足りない気がしている。
かといって、何が出来るのかも今一つよくわからないんだけど。

何が出来るって、中学1年生に何が出来るも何もないだろと思っていたんだけど。

「・・・可憐に教わろうにもなあ。」
「え?誰になんて?」
「ああごめん、独り言。」
「?」

可憐という存在は、千百合にマネージャーとしてサポートするという新たな価値観を教えてくれた。

千百合はあくまで幸村や友達の味方なのであって、立海テニス部の力になりたいかと言われると若干ニュアンスが変わるので、マネージャーになったりはしないけど。
でも、プライベートで幸村専属的な事なら何か出来るかもしれないし、ノウハウを聞くというのは有だなあなんてちょっと思っていた所に、あれである。

あの騒ぎの後に、彼氏の力になりたいから教えてくれなどとは流石に言えない。人の心があれば普通は出来ないだろう。

かと言って他に快く教えてくれそうなマネージャー。

(・・・茉奈花?)

そう。
あっちなら多分大丈夫だろう。別に気を悪くする理由も無い筈だ。
唯一の懸念というか引っかかりは、多分教えてはくれるだろうが思い切り茶化されそうという点。まあ、そこだけ目を瞑りさえすれば良いと言えば良いので。

いや、しかしでも。
この場合、網代に聞くというのは結構はばかられる。
網代自身にというより、網代に聞いたのが可憐にバレたら、多分可憐は自分がマネジとして劣っているから聞かれなかったのだと思ってしまう。
違う、そうじゃない。と言っても多分信じないだろう。信じられる状況じゃ無い筈だ。

人の役に立つって難しいな。
そう思いながら千百合が撒いた水から綺麗な虹が出て、それがやたらに呑気に見えた。