「では、今の状況を整理しよう。良いな?」
「ああ・・・」
「頼むナリ。」
柳・桑原のペアは、真田と紀伊梨と分かれた仁王を拾い、3人になった。
いろいろ情報が錯綜している。
幸いにもこのトリオは現在何のトラブルも抱えていないため、司令塔となるべく一回落ち着こうとなったわけだ。
「まず、幸村と黒崎のペア。こちらは廃ホテルの様子を見に行った所、通路を猪に塞がれ、現在は立ち退きを待っている状態だ。」
「今は安全なんだよな?」
「ああ。動けないだけだ。怪我などはしていないそうだ。」
「まあ幸村が居るからの。」
中学1年生の少年に何ができると思われそうだが、幸村は千百合が怪我を負うような事態になったら、本当に猪の2匹や3匹追い払えそうな気がする。割とマジで。
「次に、兄の黒崎と柳生。こちらは、ほぼ無傷だ。ポーチを失くした事以外は。」
「財布が中に入ってて・・・それで、カードキーも失くしたって言ってたか。財布に入れてたから。」
「そうだ。ついでに言うと、スマホも無くなったらしい。連絡は今、黒崎のスマホから行っている状態だ。」
「金銭的な損害はぶっちぎりじゃのう。柳生らしからぬミスじゃが。」
「黒崎の方が、ポーチを外せと勧めたらしいな。おそらく、何がしかの作業のためにそうした方が良いと判断したんだろうが。」
「オフザウォールのなっちんも猿には敵わなんだか。」
「まあ、そう言うな。神の子でも猪に太刀打ちできるかはわからない。」
「野生動物って怖いからな・・・それで、そのポーチを追って五十嵐と真田が、ええと?」
「五十嵐を真田が追いかけていったんじゃ。未だに連絡は取れんというか、既読がつかん。」
「そもそも、何で追いかけて行ったんだ?」
「連絡を受けた直後に猿を見かけての。まあ、ポーチを確認できたわけじゃないダニ、ただ猿を追ってるだけの可能性もあるが。」
「そ、そこの確認が出来てないのか!?」
「五十嵐らしいと言えばらしいが・・・まあ、真田が追ったのなら、滅多なことはないだろう。五十嵐も足は速いが、それでも真田の方が身体能力は上だ。すぐに追いつくさ。」
一応柳の計算上、あと5分の間は既読がつかなくてもおかしくはない。そこを超えると、事故の可能性を考え始めなければならないが。
「最後に、丸井と春日の方だが。」
「そこも何ぞあるんか?」
「ブン太が道から落ちたらしいんだ。怪我は無いって言ってたし、春日とは丁度一時的に分かれてたから、巻き添えはないって言ってたけどな。」
「ほう。しかし、戻れるんか?」
「丸井はどうやら、一人で自力で戻るつもりらしいな。元のルートには戻れないから、春日には一人で来た道を辿るよう指示したそうだ。」
「言うことを聞くんか。この場合、聞きそうにないんじゃが。」
「・・・多分、嘘を吐いてると思う。行けそうな道を見つけたから一人で行ってくる、道が険しいからお前は来るな、みたいなこと言ってるんじゃないか?」
なんと、どんぴしゃりである。この辺が桑原は流石に長い付き合い。
「ほう・・・で?」
「え?」
「春日に確認を取ったんか?指示に従って戻っとる、と連絡は来たんか。」
「あ、いや・・・でもまあ、戻ってくるとは思う・・・多分。」
「そもそも実際、探したところで丸井は見当たらないわけだからな。多少は不可解に思ったとしても当人が居なければ、春日も戻る他ないだろう。」
「どうかの。」
「おいおい・・・」
「俺もまあ、合理的に考えるとそうなるじゃろうとは思うが。ただまあ、春日はあれでたまに、なんでそうなるっちゅう事をしでかすやつじゃき。」
これは、新入生歓迎会のライブの件と、棗と仲良くなってビードロズのことを聞く中で仁王が知った事であった。たまにまれにではあるものの、紫希は異様な行動力を発揮する時がある。今がその時でないとどうして言えるか。
「仮に探す気になったとしても、まずは連絡を取ろうとするだろう。再三促されれば、従う可能性は90%以上だ。」
「まあ・・・元々素直な性格だしな。」
「そうか。まあ、参謀がそう言うのなら気にせんでええのかも知らんが。」
実はこの、「連絡を取ろうとする」というのがミソなのである。
そのことをまだ誰もー--柳さえも知らない。