「よーし!じゃあ次はこっちのターンだね!」
「さて、誰にするか・・・」
「ふむ。リーダー、何か考えはあるか?」
「あるといえばあるが。」
ちろ。
と仁王の視線が動く。
「黒崎、出ろと言ったら?」
「従うけどやりたくはない。」
バッサーと言う千百合。
「えー!出たくないの、なんでー!?」
「面倒だから。出来れば1番最後がいい、回数的には1番少ないし。」
やる気のなさを隠そうともしない千百合。
最後になるとその分、難しい位置のパネルを相手にする確率も高くなってしまうわけだが、まあそれはなんとかなるだろうと思えるのは、千百合が大概の事をそつなく熟せるスペックを持っているからである。
「ま、そう言うだろうなとは思っとったぜよ。」
「でも行けって言うなら行くわよ。」
「いや。お前さんは希望通り最後尾じゃ。」
「そうなの?」
何故最後尾か。
それは幸村の直後に千百合を持ってくると、手元が狂う事が予測されるからである。
なるべく幸村から遠い位置が良い・・・と思うと、最後尾になるのだ。
「ま、2人目はペースメーカーと行くぜよ。柳。」
「分かった、行こう。」
「頑張れ、やなぎー!」
「行くぞwそれっ!」
(ふむ、こんなものか。)
「ふっ。」
パン、と良い音がして、右下隅の9番パネルが弾かれる。
「やったー!凄いぞやなぎー!」
「ああ、流石だぜ。」
「何、大した事はしていない。」
「そう?大した事じゃない?」
「ああ、危なげなくコーナーを落とせるのは有難いぜよ。」
改めて言うが、これはストラックアウトなのである。
普段のテニスと違って、大体あの辺狙おう、では通らない。
狙うならピンポイントになるので、テニス部員と言えど、隅を正確に落とせと言うのは厳しいのだ。
「春日さん、つかぬ事をお伺いしたいのですが。」
「はい?」
「コーナーをピンポイントに落とせる・・・というのは、テニスを嗜む人ならば、皆さん出来るものなのでしょうか?」
「いえ、それは・・・」
「ま、普通にやっててもなかなか上手くは出来ねえよ。」
「そうなのですか。」
「ああ。ただ。」
「ただ?」
「立海(うち)のレギュラーなら、これくらい出来ねえ奴は居ないだろい。」
多分、同じテニス部であっても、自分、桑原、仁王は百発百中とはいかないだろう。
でも、幸村達なら軽々やってのける。
立海テニス部はそういうレベルの部活だ。
「・・・ですか。」
「凄いんですね、皆・・・」
「まあな。」
「へえ。」
「?どうした、幸村?」
「いや、柳生がね。」
目つきが怯んでいない。
良いじゃないか。
そうこなくちゃ、勧誘のし甲斐もないというもの。
そうこうしていると、PCからあのテロップ音が流れた。
【任意の人間を1名選び】
(こっちが来たか。)
これは紀伊梨が引いたのと種類が同じ。
人を巻き込むタイプのお題である。
「また選ぶ奴か・・・」
「誰にするのー?」
「私は止めてね。」
「いや、あちらから選ぶ。」
「「「え?」」」
(流石、頭の良い奴は話が早いぜよ)
実はこのお題、誰かは巻き込まねばならないのなら、なるべく敵チームの方が良いのだ。
向こうの精神を削れれば、それだけこっちの勝率が上がる。
「流石だなあ、つくづくw」
「構わないだろう、審判?」
「勿論w」
しかし、誰と言われると。
先ず、幸村は却下される。
揺するだけ無駄であろう。
紫希も気が進まない。
紫希の精神は削れるだろうが、周りがどう反応するか想像がつかないし。
となると、真田か丸井か柳生か。
「・・・では、折角だから柳生にしておくか。」
「おや、私ですか。確かに、折角ですからね。」
「ああ。お互いを知る機会になるだろう。」
「オッケー?じゃあ出すよw」
【何か1つ質問をする】
「おっ、平和!」
「確かに、自己紹介の延長みたいなものだね。」
「どんな質問でしょう・・・」
「うむ。柳は男子のデータは一通り取っているからな。」
そう、だから身長いくつとか体重どれくらいとか、そんな事聞いても1つも+にならない。
「・・・・・・」
どうせ聞くなら。
且つ、相手の精神を攻撃するなら。
「・・そうだな、では。」
「はい、なんでしょう?」
「人に言えない趣味はあるか?」
そう来たか。
柳生は咄嗟にポーカーフェイスを忘れてしまった。
「そう来たかw」
「おお!良いね良いね、きょーみあるよー!」
「えげつねえ・・・」
「しかし、人に言えない趣味とは。」
「突いて来るポイントが、柳らしいね。」
「言えない事を言わせてしまうんですか・・・」
「柳ってああいう所怖えよな。」
柳生の失態は、咄嗟に「そんなもの無い」と嘘をつけなかった所であった。
黙ってしまった時点であると肯定してしまったようなもので、こうなるともう正直にならざるを得ない。
下手に嘘を吐いても、ゲーム的にはOKでも、「え、何?こいつどんな趣味があるわけ?」と懐疑の目で見られる。
気の毒だが柳生は、もう白旗を振るしかない。
「・・・仕方がありません。もう中学生になったのですし、誰にも言うつもりはなかったのですが。」
「ほう、あるのか。」
「ええ。実は私・・・
・・・特撮が、好きなんです。」
特撮。
特殊撮影。
タイムリーにも、GWでちらと話にでたあれ。
「ほう。特撮か。」
「それってあれっしょー?ライダーとか、ウルトラとかの!」
「ええ、それです。」
「別に良いんじゃないか?そんなに妙な趣味でもないだろ?」
「桑原くん、お言葉は有難いですが、やはりこの年になってという気持ちがどうしても・・・」
「大丈夫よ。例えば紀伊梨が特撮だなんだとか言ってたらすんごい子供っぽいけど、あんたならなんとなく高尚な視点から見てんだろうなって思われるわよ。」
「千百合っち、フォローついでに紀伊梨ちゃんの事disるの止めないー?」
「・・・具体的にどう好きなんじゃ?特殊メイクとかか?」
「ああ、それが全てではありませんが特殊メイクは大きな理由ですね。ジオラマを作ったり、人形で表現をしたり、手の動きで水面の波打つ表現をしたり・・・CGで万事解決すれば良いと言うのは、個人的には無粋な発想と言わざるを得ません。やはり人間の技がなくては。」
「ほう。」
「仁王くん、嬉しそうですね。」
「そうだね。仁王もゴリ押しのような事は嫌いだから、考え方が近くて嬉しいんじゃないかな。」
「仁王は逆に、もう少し正攻法で物事を済ませる事を覚えるべきだと思うのだが。」
「ま、まあまあ・・・あの離れ業が得意な所が、仁王くんの持ち味ですよ!」
「なあなあ、テニレンジャーとか見てた?」
「勿論。あれは5本の指に入る気に入りの作品です。DVDも全巻揃えていますよ。丸井くんもお好きですか、テニレンジャー?」
「おう!なあ、良かったら今度貸してくれねえ?久しぶりに見たくなってきちまった。」
「ええ、喜んで。なんなら、私の家で鑑賞会でもしましょうか?」
「マジ!?」
「あー!ブンブンずるいずるい、私も行くー!見たいー!」
「大人しくしてろ、紀伊梨。」
「俺も俺もw俺も見たいw」
「そこでくたばってろ兄貴。」
「酷くない?ねえ、酷くない?柳、どう思う?」
「そうだな、一言で表すとすれば・・・自業自得、だろうか。」
「てめえw未クリア判定出すぞw」
「お前はそういう事はしないさ。」
そう言って、皆から口々に特撮の話題を振られる柳生を見ながら微笑む柳に、棗はちょっと悔しいと思いながらもクリア判定を出したのだった。