Solicitation:1st game 4 - 2/8


「さて、では仁王君の気が逸れている間に言ってしまいましょうかね。」
「うん、どうぞ。」
「私の好みは清らかな女性、ですかね。」
「へえ、柳生にぴったりだね。」
「ああ、納得だ。」

如何にも言いそうである。
言いそうであるし、実際上手くいくだろうと思われる。

「図書館で、恋人と2人読書などしていそうだ。」
「ああ、良いですね。植物園など個人的には好きですが。」
「そうだね。柳生とデートするなら、そういう文化的な所が多くなりそうだよ。」

しかし。
文化的な所が多くなりそうとなると。

「とすると、ある程度の知性も求められるな。」
「そうですね。教養のある女性は魅力的です。直向に勉学に励む姿は好感が持てますし、やはり話が合わなければ、友人にはなれてもお付き合いとなると少し。」
「そうかな?」
「おや、幸村君はそうは思いませんか?」
「話が合わないなら、合わないなりに楽しい事もあると俺は思うんだ。見て居る世界が全然違うという事だから、お互いに見識が広がるいいチャンスだし。」

そう言う幸村は、知らん間に顔が綻んでいる。

合わない話題。
それを知らない世界への扉、と取る事が出来るのは、相互に寄り添う気持ちがあるからこそである。

知らない。興味ない。
じゃなくて、知らない、教えて、と言い合える関係を築けているから、千百合との時間は愛おしい。

(・・・とか考えてそう)

「・・・たい、痛い痛い痛い!止めろ紀伊梨!」
「えへへ!ふっふっふー♪」
「お腹に抱きつくな、締めるな、苦しい!なんなのよ馬鹿!放せ!」
「えー?えっへっへー!」

超ニコニコ顔で千百合に抱き着く紀伊梨。

そのちょっと離れた所で、やっぱり超ニコニコ顔の紫希がうふふ、と零しながらそわそわ浮かれている。

「嬉しそうだな。」
「はい、嬉しいですよ。」
「・・・あっちには、行かないのか?一緒に騒ぎたいんじゃ・・・」
「お気遣い有難うございます桑原君。でも、私も行くとバレてしまいますから。」

幸村と千百合が仲良くお付き合い出来ているなんて嬉しいに決まってる。
でも自分が浮かれて抱き着きに行ったりなんかしたら、ニコニコの理由がバレて千百合が照れてしまうから、大人しくしていよう。

「大手で来たか。なかなか手堅い所を責めるな。」
「は?」
「何の話じゃ?」
「?何のと言って、今している話に決まっているだろう。清らかで勉学に向上心のある女子・・・少なくとも、そう酷い恋愛にはなるまい。」
「あ、そういう意味かよ。」
「何処の戦の話かと思うたぜよ。」

もっと簡単に、それこそ俗っぽく言ってくれないだろうか。大手とか責めるとか、戦用語そのままなのだが。

「ま、でも恋は戦争って言うし、強ち間違いでもねえんじゃねえ?」
「love is warか。たしかに聞くのう。」
「恋は戦争。ふむ、なかなか的を射た表現だな。」
「的を射とるか?」
「ああ。先手必勝、速戦即決。後手に回らず、勇気を持って潔く勝負を終わらせる事が良いのは、戦も恋愛も変わらん。無駄に長引けば消耗するだけだ。」
「「・・・・・」」
「なんだ。」
「いや、なんつうか・・・真田が恋愛を語るとか意外だろい。」
「語ると言う程の事ではない。当たり前の事を述べたに過ぎん。」
「当たり前かー?」
「当たり前だ。愚図愚図している間に、好いている女子に他の恋人が出来たらどうするつもりだ。」
「まあそうなんだけどよ。」
「お前さんは本当に正論大好きじゃのう。」
「どういう意味だ!」

そのままの意味である。

「仁王はあれだよな。」
「?」
「漁夫之利。」
「ああ、好きな響きじゃ。相手が消耗した所で、最小限の労力でサッと欲しいものを貰うのは、ゲームの醍醐味じゃな。」
「たるんどる!正々堂々戦わんか!」
「これも作戦じゃ。・・・丸井はええの。」
「ん?」
「お前さん、鎧袖一触じゃろ。」

鎧袖一触。
端的に言うと、楽勝。

「そうなのか?」
「顔は良いし、人当たりがええからの。その気になれば大概の女子は落とせるじゃろ。」
「鎧袖一触、ねえ・・・」

確かに、言っちゃなんだけど、恋愛の事で苦労した事はと言われると答えに詰まる。
彼女欲しいなーとか思うようになる前に、小学校の頃は何人かから告白されたし。
今も別に取り立てて彼女欲しいと思ってないけれど、反面ちょくちょく友達からは、どこそこのクラスの誰それさんが自分を好きらしいぞ、とか聞かされる。

「まあほら。俺って良い男だろい?」
「自分で言うかの。」



「・・・ふふっ。」
「幸村君?どうかしましたか?」
「あ、ううん。なんでも。」

あんな風に冗談めいて自分を良い男だ、とか言えるのは、今安定している証拠である。
あれが片思いとかするようになると、急に言いづらくなるのだ。
それを思うと、幸村は微笑ましくてつい笑ってしまう。