切原赤也。
彼は、普通の両親の元に生まれた。
普通の父親。
普通の母親。
普通の姉。
別にドラマチックなこともないーーーと思っていたら、10の誕生日にいきなり両親が言ってきた。
「赤也!魔法使いになれるのよ!」
「魔法学校に入学だ!やったな、赤也!凄いぞ!」
「良いなー!私もなりたかったんですけどー!お土産買ってきてよー!」
「・・・は?」
どうやら自分は、魔法使いらしい。
子供じゃないんだから、入学準備の物を買うくらい1人でできらあ!
と言って1人で来たわけだが、切原は到着後1分で自分の判断を後悔し始めていた。
「・・・・やべえ、どこで何買ったら良いのかわかんねえ!」
辛うじて、買う物リストはある。
あるんだけど、わからん。
ここはダイアゴン横丁。
魔法使い御用達の街で、ホグワーツ魔法学校に通う生徒は、入学準備物をここで購入する。
のだが。
「教科書、はわかっけど・・・つえ?ローブ?鍋・・・?」
鍋って、家で母ちゃんが使ってるあれじゃ駄目なの。
とか思う切原は、やはりあまりよくわかっていなかった。
「後はー?はかりと・・・ペットの居る人は?ペットねえーーーうわっ!!」
「わあっ!」
角の出会い頭で誰かとぶつかって、切原は尻もちをついた。
「いった〜・・・ごめんねー!」
「あてててて・・・いや、俺のがすんませ、ん・・・」
切原は言葉を切った。
生まれてこのかた、こんな美少女に会ったことはないといいきれる。
そのくらいの美少女が、目の前にいた。
「・・・・・」
「あ!ねえねえ、これって1年生のリストっしょ?」
「え?ああ、はい・・・」
「ってことは、ホグワーツに入学するの!?1年生?」
「そうっすけど・・・?」
「やったー!新入生だー!」
少女は立ち上がって、その場でクルクル回り出した。
何だこの人・・・と思いながら立ち上がると、少女は切原の方を向いてキョロキョロした。
「あれ?おとーさんとかおかーさんとか、せんせーは?」
「え?居ませんけど・・・」
「え、迷子!?」
「違いますけど!元々居ないんすよ!いや家には居るっすけど!1人で来たから!」
「へー!そうなんだ、偉ーい!」
「え?ああ、まあ・・・へへっ!」
ドヤる切原だが、こういう場合偉いのは、1人で「完遂」できた場合である。
1人で突っ込んで行って普通に1人で往生するのは、順当と言うのであって。
「あ、でもでも!新入生だったらわかんないことあるんじゃない?紀伊梨ちゃんが付いてってあげよーか?ね!そーしよ!」
「は?」
「ふふーん!なんたって紀伊梨ちゃんは、2ねんせーの先輩ですからねっ!」
紀伊梨は、次の秋2年生になる。
先輩ぶりたいお年頃なのであった。
言うて1年しか違わないじゃん。
と思う人も多いだろうが、切原はどっちかというと思わない方だった。
むしろ、素直にへー!と感心するタイプであった。
「じゃあ、1個上っすか?」
「そう!1人じゃ大変っしょ?」
正直これは、大分ありがたい申し出だった。
見栄張った手前ダサいと言う気持ちもあるが、それ以上に右も左もわからない感がすごい。
「・・・んじゃあ、お願いします!」
「やったー!紀伊梨ちゃんは、五十嵐紀伊梨ちゃんね!先輩って呼んでね!」
「切原赤也っす!よろしくっす、先輩!」
イェーイ、とハイタッチする2人は、ずっと前からの友達のようだった。