5周年記念企画:ようこそ魔法界へ - 8/9


その日の夜。

紀伊梨の家には、仲の良い友人で都合のついた者が集まり、泣く彼女を慰めていた。

「うああああん!うああああん!うああああ・・・」

「紀伊梨ちゃん、落ち着いて・・・きっと大丈夫ですから。」
「挽回したら良いじゃん。時間あるんだし。」
「そ、そうそうっ!それにほら、多分あの子グリフィンドールに来る・・・と思うしっ!」

切原は盾の呪文の帽子を被っていたため、炎はなんとか免れた。
しかし、それでも衝撃は受けきれず、脳震盪を起こして倒れ、聖マンゴ病院という魔法界の病院に運ばれたのである。

紀伊梨は今、悲しいことだらけでしっちゃかめっちゃかであった。

まともにお別れもできなかったこと。
自分が先輩なのに、切原に守ってもらった挙句、本人は病院送りになってしまったこと。

何よりーーー切原に怖い思いをさせてしまったこと。

「・・・ねえ紫希ちゃんっ。因みに病状は・・・」
「命に別状はないです。精神も正常ですし、怪我ももう治療してもらってるので、傷病的な異常は、もうまったく心配ないとのこと・・・なんですけど・・・」
「ほら、だから大丈夫だって。」
「うええええん・・・」

例え怪我も病気もしていなくてもだ。
怖い思いをした、という事実にも記憶にも変わりはない。

切原は今回のことで、魔法界全体が嫌になってしまったかもしれなかった。
というか、その可能性は非常に高かった。

今回の騒動は、魔法使いでも普通以上に怖い経験の部類に入る。
それなのに、魔法界で過ごす初日がこんなことになってしまった切原の心情たるやいかに。というと、残念ながら良い結果とは誰にも言えなかった。

紀伊梨は魔法使いだ。
生まれた時から魔法使いだった。
だからマグルの切原にも、ここが楽しいと思って欲しくてーーーそれなのに、楽しいどころかケースとしては最悪の部類。

もうホグワーツの手続き自体は終わっている。
だから、やっぱり辞めますとはもう言えない。
だから良いじゃんーーーという見方もできるが、そういう話じゃないと紀伊梨は思っていた。

そういう風に、強制的に魔法界に縛りたいわけじゃないのだ。
切原が、自分からここは楽しいと思って欲しいのだ。

なのに。
なのに。

「・・・しょうがないじゃん、もう済んだことなんだからさ。」
「そう、ですよね・・・ですから紀伊梨ちゃん、どうせなら、切原くんの学校生活を楽しいものにしてあげるのはどうですか?私達も、サポートしますから・・・」
「うん、それが良いと思うなっ。これからたくさん、楽しいこと教えてあげようよっ。」

紀伊梨は涙で真っ赤になった顔を上げた。

それで済むかな。
大丈夫かな。

そういう気持ちもあるが、紀伊梨は本能でわかっていた。
もうそれに賭けるしかないのだ。
失った信頼は、時間をかけて取り戻すしか無い。

「・・・・うああああん!」

それでもやっぱり悲しくて、紀伊梨は友人に抱きついて泣いた。