Overnight party 2 - 6/6


ところで、一同を男子と女子に分けると、男子は8人になる。
其の為、風呂の分け方として、3・3・2が適当ではという結論になったのだが。今回、その2に割り振られた2人は誰かと言うと。

「あっはっはっはっは、いやいやいやいやいや・・・w」
「何笑ってんの?」
「いやあ、まさかこんな事になると思わなくてwこうなるって分かってたら話題を纏めて来たのにw」
「え、何?お前もしかして、俺との話題見つからねえとか思ってんの?今更?」
「いや流石に、そこまで今更な事は考えてないwブンブン君に向かって、話題が無いとか考えた事も無いしwちょっとこっちの話w」
「?」

そう。2人になったのは、棗と丸井だった。
正に、秘密の話をするのならまたとない好機なわけだが、降って湧いたチャンス過ぎて棗は何を話せばいいかとても迷う。

「何?何か話したい事あんの?」
「あるんだけどねwあるんだけど、何から聞いていいかって言うねw」
「何だよ、そんなシリアス系統の話?」
「いや、シリアスっていうわけでもwないっちゃないんだけれどもwうーん・・・」

どうしよう。どれにしよう。時間は有限だ、あんまりもたもたもしていられないし。

「・・・よしw聞こうw聞きたかったんだw」
「おう、何?」

「ズバリ、今好きな人居ますかw」

ここである。
まずここで、はいかいいえかが大きな分岐点。
直接の返事だけではなく、表情とか目線とか、そういうのもちゃんと見ていなくては。
普段通りへらへら笑いつつも、ちゃんと注意を払う棗の前で、丸井はさらりと予想外の返事をした。

「え、ねえと思うけどお前俺の事好きなの?」
「違うわwやめてくれ友達に対してw」
「だよな、ビビった。」
「俺はその発想にビビったわw普通男から聞かれてもそうは思わんだろw」
「そうなんだけど、特にここ最近結構聞かれんだよなー。全員女子なんだけどさ。一応ジャッカルにも意見聞いてみたけど、やっぱそれは俺の事本人が好きか、本人の友達が好きかどっちかじゃねえ?って話になって、」
「ちょっと待ってw何か何気に話してるけど、その情報は結構分かる事が多いぜ、おいw」

はい、いいえ以前にもうこの時点で、棗はちょっと物申したい。

「え、何か間違ってる?」
「間違ってないよwその推測は多分正しいよwそうね、女子が聞いてくる場合は探りを入れるのが目的よねw」
「だろい?」
「ただもう一歩踏み込むとねw」
「踏み込む?」
「多分ね、ブンブン君はね、誰か好きな人が居ると思われてるのよwだから確認を取ってくるわけよwブンブン君は普通にモテてると思うけどさ、その上でその質問をいっつも繰り出されるって言うのは、モテる以上に「多分丸井君はこの子が好きなんだろうなあ」って思われてるんですよw事実がどうあれねw」
「マジで?」
「マジマジwまあ貴方は、性格的に聞きやすいからw人より余計に聞かれてしまうんだと思うけどw」

例えば、同じモテるでもこれが仁王辺りになると大分話が違うのだ。
仁王に向かって、仁王君好きな人居るの?などと探りを入れる人など殆ど居ない。そんな人居ないと、見ていればすぐわかるからである。あるとすれば、せいぜい告白直前の一応の念押し確認くらいのものだろう。

丸井は人当たりが良いことに+して、如何にも居そうな雰囲気がある。というより、もっとはっきり言うと、具体的にこの子が好きなんだよね多分、と思い当たられる存在が居る。
だから聞かれまくるのだ。聞く方も、うん俺彼奴の事好き、と返ってくるかもと半分以上覚悟して聞きに行ってるに違いない。

「へえー・・・誰?」
「え?」
「誰か分かる?」
「・・・と言いますとw」
「いや、俺は好きな奴とか今別に居ねえんだけど。今の話考えたら、要はそれっぽい奴が居るように見えてる、って事じゃん?それって誰かなーと思って。」
「分からんかw」
「うん。」

此処。
此処も、予想外ながら大きな分岐だ、と棗は感じた。

此処で具体的な名前を上げるのは簡単だが。
逆に、名前を上げて不発に終わった場合、それは結構その女子に対して不利になる。
もし好きになりかけているが今はまだはっきりしてない場合、此処で名前を言うと、単純に好きってわけじゃないを通り越し、「一度好きかどうか考えた結果そうではないと結論が出た女子」のレッテルを貼られる。そうなると、それを剝がすのには大分労力がいるのだ。

ハイリターンではあるが、それと同時に余りにハイリスク。
そして、もう一つ。

「・・・ちな、ブンブン君w」
「ん?」
「その聞いてきた時にさあw好きな人居る?じゃなくてこう、具体的に名前言ってきた人居る?A子ちゃんの事好き?みたいな感じでw」
「いや?ああでも、確かに何か言いかけてたみたいな奴居たな、何人か。結局言ってこなかったけど。」

(やはりかw)

そうだろうな。そりゃあそうだろう。
だって、もし名前を上げてそれがきっかけで自覚とかされたら、たまったもんじゃない。敵に塩を送るどころの騒ぎじゃない。

結果、名前を出さず「好きな子」という表現が一番無難。という事になるのだろう。
分かる、気持ちはとてもよく分かる。棗だって今怖い。
親友の紫希にしろ。最近何か疑惑の目で見られている郁にしろ。どっちの名前でも、悪い方へ転んだ時の事を考えるととても上げられない。

(しかし思ってたより敵は多そうだぞこれ、)

「なあって。」
「え!あ、ごめん何w聞いてなかったw」
「だから、さっき聞いたことの返事は?」
「返事?」
「だから誰がそうだか知ってんのかって。」
「いやいやいやいやいや!嫌だよ俺、そんなん言いたくないわw責任取れないもん怖いもん嫌だよw」
「あー、そっか。言うのもこの場合まずいのか。まあそっか。」
「そうだよもうちょっと考えてw」

ふーん、なんて言いながらスポンジを泡立てる丸井の表情は、普通オブ普通。マジで打っても打っても響かないよなあ、なんて棗は考える。

まあ、モテる男なんてこんなものかもしれない。
いちいちこの手の話に動揺してたらキリがないのだろう。

「なあ、じゃあお前は?」
「え?」
「好きな奴居る?」
「・・・え、俺?」
「他に誰が居るんだよ。」
「えええええいやまあそうですよねw確かに、人に振ったのならお前も言えって事になりますわねw」
「わかってんじゃん♪で、どう?」
「いや、居ないけどw」
「そう?あ、じゃあ好みは?」
「ちょっと待ってwなんでそんなぐいぐい来るのよw」
「だってお前ってさ、何か女子とかに限らず好みとかってあんまりよくわかんねえんだよな。色んな事に拘りがねえじゃん?」
「まあ確かに好き嫌いとか拘りは薄い方ではあるw待って待って考えさせてwえっとね、待ってね、えっとね、」

よもや自分にお鉢が回ってくるとか思っていなかったのでプチパニックになる棗だが、それはそれとして生来の性格はただで起きる事を許さない。
どうせなら貰える情報は欲しい。

まあその情報は何に使うのかというと、ただ自分が面白いだけなのだが。

「・・・そうだなあ。」
「どう?」

「・・・・・紫希みたいなタイプが好き・・・

・・・そうってよく言われるw」

「はーあ・・・」

心底呆れました、と言わんばかりに大仰に溜息を吐く丸井。

「お前っていっつもそうだよなー。何か結論を言わねえっていうか、はっきり言わねえっていうか、結局何も教えねえっていうか。」
「だってさあw実際問題困るしさあw好みって言われても特に・・・あ。」
「お。何か思いついた?」
「俺ね、結構顔を重視しちゃうw」
「へー!お前面食いかよい、すっげえ意外。」
「いや面食いじゃない面食いじゃw美人が良いとかそういう話じゃなくてねwこう・・・毎日見てても飽きない顔の人。が良い。みたいなw」
「人の顔に向かって飽きるとかあんの?」
「だってさ確率は結構低いけど、もし結婚までいったら毎朝毎晩同じ顔を見るわけよw下手したら死ぬまで見るわけよw少なくとも、その頻回に耐えうる程度には好みの顔で居てくれないと困るw」
「ふうん。」
「おい、答えたのに何その気のない返事w」
「なーんかピンと来にくいんだよな。同調もしづらいし、否定もしづらいし。」
「ひっでええw」
「だってそもそも、実際毎日見る顔ってのは居んじゃん?マネージャーとかさ。お前だってビードロズはほぼ毎日見る顔だろい?」
「あ、言いましたねw」
「何だよその言い方w」
「あのね、毎日視界に入る顔と毎日見たい顔って違うのよw付き合ってるとね、嫌でも見ないといけない瞬間ってのがあるんすよw自分がぼこぼこに凹んでる時とかかっこ悪い時とかさ、そういう時も見たい顔って本当にマネージャー全員に思ってる?」

「・・・・・・!」

「思わないでしょw家族の顔も見たくない時あるでしょwそういう時に見たい顔じゃないとやっぱり嫌だから、俺的に顔は割と妥協できないポイントなのよw」
「・・・そっか。」

人より頻度が少ない方とは言え、丸井だってある。
誰にも会いたくない時とか。一人にして欲しい時とか。
普通そういう時って誰の顔も見たいと思わないものだが、それでも見たいような顔がある。そういう顔が良い。
棗の言ってるのは、そういう事だ。

そう言われたら丸井だってわかる。分かるけど。

「・・・ん?」
「あれwまだ何か納得がいかないw」
「いや、本当にそんな顔の奴が居たら、そいつの事相当好きだよなと思って。」
「そうよwわかってくれてるじゃんw」
「おう、それはわかったんだけど。」
「けど?」
「でも、それって結局好みとかじゃなくて、好きな奴に対しては当たり前の事言ってるだけじゃねえ?」
「おう、バレたw」
「おい!」