その時点から少し時を戻して、丸井はトンネルを進んでいた。
進んでいたのだが、丁度トンネルの半分ほどまで来た時だった。
「・・・・はーあ。」
丸井はちょっとそこらの瓦礫に座って、考えることにした。
まずい。非常に非常に非常に、まずい。
心が折れそう。
(疲れた・・・ガムもねえし)
丸井は、懐中電灯の類を持っていなかった。
ライトが必要な場面になったら、スマホのライトを使ったら良いと思っていた。
だから窓一つないこの廃トンネルの中で、丸井はずーっとスマホのライトを頼りに進んできたのだが、ライトという奴は、とかくバッテリーを消耗する。
それはわかってる。でも、点けないとどうしようもない。だって、点けなかったらいよいよ前後左右がわからないレベルの真っ暗闇になってしまうのだ。
ただ、途中で切れるのもそれはそれで困る。
トンネル出てから連絡が取れないと、合流できなくて詰む。
結局苦肉の策としてライトの強度を最弱にし、本当に次の一歩の部分だけが見られるくらいの薄明りでここまでやってきたのだが、これがまあ辛い。
怖い。薄気味悪い。
目の前に何かがあっても、本当に目の前まで接近するまで分からないという恐怖。
此処がトンネルというのも災いした。
電波が飛ばないからGPSが使えない。
つまり、後どれくらいで出口なのか分からないのだ。
見通しが立たない状態で、視界0で廃トンネルを一人で進めって、いくら男子でも中学1年生にはきつい。大人の男でも震えるだろう。ましてもう夕方だ。これから闇が深くなることはあっても、明るくなることは絶対ない。
変質者とか居たら、この状況だとまず間違いなく自分が負けて終わる。
野生の猪とかサルの群れとかに出会っても、やっぱり自分の分が悪い。
というかぶっちゃけ、今に至るまでに何回かこうもりにはめぐり合って、その都度びびらされている。気配を感じるなと思ってライトを向けたら、ぶら下がってるのと目が合って、辺りに居た何匹かにキーッ!とか叫ばれると真面目に弱音吐きそうになる。
幽霊なんて、もう。
『おい、行くぞ・・・どうしたんだよさっきから!遅いぞ、こんなトンネル、早く出てー--』
『なあ・・・俺の足、見てくれないか?』
『足・・・・!?』
『嘘だよな・・・誰かが俺の足を掴んでるなんて・・・』
『あ・・・あ・・・』
『頼むよ・・・怖くて見られないんだ、頼むよ・・・』
「~~~~~~!」
パン!と自分の膝を叩いて、丸井は深く息を吐いた。
映画思い出してビビってる場合じゃない。
行こう。行かないと、永遠に出られない。
(・・・春日、どうしてんだろ。ジャッカルのやつ、ちゃんと拾ってくれてんだろうな?)
まあ、みすみす紫希をこんな所に来させなくて良かったと思えば、多少は救われるか。
・・・救われるか?