「あれ、いっちー!?」
紀伊梨はびっくり仰天した。
いまや校内のほとんどの人間が、SASUKEの周りに集まりつつあった。
特にテニス部やビードロズは、千百合と幸村が当事者として名指しされているため、当然のように最前列に居た。
そして今、ゴールを見上げたらなんともう一人知り合いが。
「一条に佐川部長まで・・・一体何なのだこれは!」
「ってゆーか、ゆっきーどこ!?どこ居るの!?その辺居る!?」
幸村はもうとっくに一条直樹に、懇切丁寧に案内されている。それを知らない紀伊梨は、よもや幸村がまだ辿り着いていないのではと要らない心配をして、辺りを見回した。
そして丁度その時、散り散りになっていた他のメンバーが紀伊梨の良く通る声に誘導されて、合流しに姿を見せた。
「紀伊梨ちゃん!真田君!」
「あー、紫希ぴょん!ブンブンにニオニオ!って、あれ?鈴ちん?」
「あ、はい。私も居ます・・・」
「あれ?あれ?鈴ちんは此処に居るのに、いっちーはあっち?」
「あー、あの・・・実は30分前くらいに、シフトの関係で分かれちゃって。だから、私もなんで郁があんなとこに居るのか、さっぱり?」
疑問は当然であった。
あそこに今郁が居るのは、ただの事故である。イレギュラー。予定外。
「お前達、一緒に居ながら眼を離したのか。」
「目を離したっちゅうようなもんでもないじゃろ。」
「子供じゃねえんだし、そりゃずっと一緒には居ねえよ・・・春日?」
紫希は心配そうな顔で、郁をじっと見上げていた。
さっきの放送では、郁の話は一言も触れられなかった。
そして紫希の目には、こう言うとなんだが、少なくとも鳴海は悪い人としか思えないのだ。千百合をさらって、取り返しに来いなんて。
佐川と郁が何故上に居るのかはわからないが、もし2人ともさらわれていたら、助けないといけない。
でも、助ける条件を鳴海が提示してこない。
誰を助けたら良いのか、どう助けたら良いのか。気ばかり逸って、紫希はつい上を見上げてしまう。
そもそも千百合が人質である時点で、結構焦るのに。
「着いたー!」
「棗君!柳君!」
「なっちーん!やなぎー!」
「誰か、状況がわかるか?」
「あいにくじゃが、俺らも他の奴ら程度のことしかわからんぜよ。」
「よ、ジャッカル。」
「ブン太・・・何か落ち着いてるな。」
「まあな。意味はよくわかんねえけど、ひとまずは怪我とかなさそうだし。」
「ああ、それはまあ・・・」
「真田君!」
「柳生!探していたんだ、これはなんだ?生徒会は何か知っているのか?」
「実は・・・それが、その。」
「知らんのか。」
「・・・実は、許可を出しているんです。」
「何!?」
全員が柳生の方を見た。
「正確に言うと、許可を出したというより、催しをするということに対して許可を出しています。視聴覚室の鍵も渡しました。ただし、申請の段階ではこんなことをするとは言われていません。」
「まあ、流石に通らないだろうな。」
「それから、もうひとつ。企画参加者として、黒崎さんの直筆サインがありました。」
「え!?」
「???え、どゆこと?」
「つまり、黒崎さんは進んで協力しているわけです。この事態に。」