Festival of ocean:Captive 2 - 4/5


千百合は現状に手を貸している。

そのことは、幸村にもとうに察しがついていた。
本当に千百合が嫌がってるなら、もっと抵抗するだろう。あんな風に、座してじっとなんてしていない。

それはそれとして、助けないという選択肢はないけれど。

『あなたは、王子様役なの。幸村君・・・囚われのお姫様を助ける所、見せてくれるよね。』


(ん?)


幸村は少し眉を上げた。

王子様役。
囚われのお姫様を助ける。

・・・それが見たいのか?

(いや、でも・・・見てどうするつもりなんだろう。鳴海先輩に何か得があるように思えない。)

分からない。
目的は分かったが、そこに至るまでの動機が今度は見えなくなった。


『・・・それから、本当はこれは予定外だったんだけど。前哨戦をするね。』


ん?という声が、幸村だけでなくそこかしこからも上がった。
2-Dの人間すらも、こんなのは聞いていない。

当たり前である。鳴海が今、即興で決めたのだから。


『幸村君、もうひとり選んで良いよ。ここに居る一条郁ちゃんを助ける人を選んでね。』


今度こそ幸村は目を大きく見開いた。


『巻き込むつもりはなかったんだけれど、成り行きで巻き込んじゃって。でももう、どうしようもないから・・・選ばれた人は、幸村君の前にコースに挑戦してもらうね。』


これは鳴海の気遣いであった。

実際の所はいじめの末にということになる。
しかし、ほぼ全校生徒が集まっているこの場で事のあらましを説明すると、とんでもないことになるのも本当だ。
たとえ自分に非が無くても、いじめられてると人に言うのは勇気が要るし。

だから、取り敢えずこの場では自分が悪者になることにしたのだった。
どうせ悪者だから、罪が一個増えた所でいまさらだ。


『もしかしたらその過程でコースのどこかが機能不全になるかもしれないけど、それはハンデって事で。だから、なるべく余裕でクリアしてくれそうな人を選ぶと良いよ。』


(なるほど。コースを壊す気なのか。)

いや、壊す気、とまではさすがに言い過ぎかもしれないが。
でも壊れたら、それはそれで良いと考えていることは確かだった。


『わかってくれたかな?』


幸村はス、と右手を上げた。
質問があります、のアピールだ。多分マイクなしでは、声はあそこまではっきり届かないだろうから。


『誰か、幸村君にマイクを。』


鳴海が言うと、近くに居た女生徒が、平然とマイクを譲ってくれた。
2-D全員内通者と言うのは、どうやら本当らしい。

幸村はマイクを受け取り、スイッチを入れた。


「・・・・・・・」


ゴールを見上げた。

愛しい彼女。
そしてその彼女を、何故か人質にする先輩。
何も言わない部長。
何故かいる新人マネージャー。

全員を結びつけるには、情報が足りなさすぎる。


『・・・鳴海先輩、幸村です。』


ギャラリー全員が、スタートに佇む幸村を見た。
幸村本人は、意に介していないけど。

『質問が許されているようなので、お言葉に甘えてお聞かせ願いたいことがあります。』

『・・・どうぞ。』

『なぜこんなことを?』

ここがわかれば大体のことは想像がつく気がした。
でも反面、多分教えては貰えないだろうとも思った。

『・・・幸村君が辿り着いたら、黒崎さんから聞いて。』

(やっぱり駄目か。)

まあ、これは想定の範囲内だ。
次。

『あなたが千百合を捉えているのはわかります。一条郁さんに関しましても、まあ立ち位置はわかりました。ですが、佐川部長はなぜ居るんですか?』

鳴海は今度は、しばらく黙っていた。

『・・・保険かな。』

何の、誰に対するやつなのか。
それは聞かなかった。多分これも答えてもらえないだろう。

『他に質問は?』

『最後にひとつだけ。』

『どうぞ。』


『千百合は元気ですか。』


無傷ですか、とは聞かない。
無傷であっても元気でないなら、幸村は鳴海を許さない。殴らなければ、蹴らなければそれで良いなんてことはないと、幸村もビードロズも随分前から知っていた。

『・・・元気かどうかはちょっと私じゃわからないから、聞くね。黒崎さん、どう?元気?・・・元気だって。』

『そうですか。』

『おしまい?』

『はい。もう聞きたいことは聞きました。』

『そう。じゃあ、話を戻すね。一条さんを助ける役を選んでね。』

『俺が選ぶんですよね。』

『うん。まあ別に、どうしても幸村君の指名じゃなきゃいけない!ってことはないんだけど。人選によって不利度合いが変わっちゃうから、自分で決められた方が良いかなって。』

『なるほど。』

さて。
どうするか。