Carino - 3/7


「アレッ?」
「やった、思ったより空いてるじゃん?」
「うん、探しやすそうっ!」
「まあ、私らが出遅れたってことの証明になってる気もするけど~。」
「グ!」

氷帝は基本優秀な人間が多い。
ので、この手の課題に悩まない人間が多い、とも言える。

「だ、大丈夫だよっ!まだ時間あるしっ。」
「まあ可憐はあるかもしれないけど~?」
「ワタシには無いって言いたいの!?」
「だって真美、そもそも読むのに時間かかるじゃん。」
「グウ・・・!」

言いながら、一同はとりあえず小説コーナーに進む。

本のPRなので、基本的に対象となるのは小説だ。
図鑑とか専門書とかは、そういうのが好きな人で無い限り、基本選ばれない。

なので当てもなく、なんとなくでそちらへぞろぞろと移動した一同だったが。

「・・・あれ?網代さん?」
「あ、本当だっ!茉奈花、ちゃん・・・?」

網代は1冊の本を開いてじっと見ていた。

読んでいるのではない。
見ていた。
そのことは、一切動かない目線が物語っていた。

本を読んでいれば、字を追って目線が動くのが普通なのだ。そうじゃないということは、つまりどこかを注視しているということ。

やや目が眇め気味に細められているのは、後ろから入る日光が白いページに反射して眩しいからか。
それとも。

「・・・あ、あのー、茉奈花ちゃん・・・」
「・・・!あら、可憐ちゃん?皆も。やだごめんね、気づかなかったわ。」

言いながら網代は、本を閉じて棚に戻した。
朗らかに笑う顔には、さっきの複雑そうな表情の欠片も見当たらない。

「皆どうしたの?本探し?」
「う、うん・・・」
「何か面白い本あった~?」
「うーん、悪いけど私あんまり詳しくないのよ、ね。本はあんまり読まないし。」
「そうなの?セーセキ良いのに?」
「あらやだ、成績と読書の量なんて関係ないわよ。私本なんて、年に1冊読むかどうかくらいよ?」

(そうなんだ・・・・)

勝手にそこそこ読む方なのだとイメージで思っていたが、確かによくよく考えると、網代の趣味として本はあまり好みじゃないのかもしれない。

「可憐ちゃんは、本が決まってるの?」
「ううんっ。まあ、最悪今まで読んだことがあるやつでも良いかな、って思うけど、この機機会に新しい本を見つけてみようかなって。」
「おい、見習えよ~?」
「デキナイから!今こうしてるんです!」
「そうだ、可憐ちゃん。侑士君に頼んでみたら?」
「えっ?」

可憐はちょっと目を見開いた。

「ほら、侑士君って読書が趣味とまではいかないけど、そこそこ読んでるから。少なくとも私よりは、きっといろいろ知ってるわよ?」
「ああ、うん・・・そうかもだけど・・・」

そうかもだけど。

そうかもだけどそれはそれとして。

咄嗟のことで煮え切らない返事しか出てこない可憐に、伊丹が助け船を出した。

「じゃあ、見かけたら頼むことにする。私ら皆、未だに本未定だし。」
「そうなの?まあまだ時間はあるし、決まってない人も結構多いから、あんまり焦ることもないわよね。」
「そういえば網代さんはもう決まってるの~?」
「うーん、目星は付けたって感じかな?候補はあるけど、決定はまだね。」
「ねーねー!何か、網代さんおススメのは無いの?」
「うわ、のっかる気丸出し~。」
「違う!サンコーにするの!サンコーに!」
「あはははは!そうねえ・・・・私なら、『陽だまりの花籠』とかが好きかな?」

奈良坂美緒よ。結構古めのやつだけど。
網代の言った本のタイトルも、作者も、可憐にはわからなかった。