「あ!良いな、楽してんじゃん五十嵐。」
丸井は、今しがた柳生とシャワーから帰ってきた所だった。
まだ赤い髪の毛先から雫が滴っている身としては、髪を拭いて貰っている光景が羨ましい。
「えっへん!良いでしょー!気持ち良いんだよー!」
「でもお前、春日の面倒見る側に回りたかったんじゃねえの?」
「・・・はっ!?」
思い出した。
そう言えばそうだった。
ショック!な顔の紀伊梨に丸井は笑いを堪えられない。
「紫希ぴょん!交代!交代しよっ!今度は紀伊梨ちゃんがやったげる!いや寧ろやらせてくだせえ!」
「あはは・・・お気持ちは嬉しいですけれど、私もう自分でやってしまったので・・・」
「うあああー!出遅れたかー!」
「はいはい、諦めた諦めた。・・・というわけで春日、次は俺な♪」
「え?」
さも当然の様なにこにこ顔で自分を指差す丸井は、とっても楽しそうだ。
「駄目?」
「え、あ、いえ、駄目とかは無いですけれど、上手く出来るかどうか・・・」
「上手いんだろい?だよな、五十嵐?」
「うん!紫希ぴょんじょーずだよ!」
「だよな。ってわけで、シクヨロ!」
「あ!今はまだ紀伊梨ちゃんのターンなんだかんね!順番ですぞ順番!」
「なにやら微笑ましいですね。」
綺麗にペンキを洗い落として、着替えてきた柳生が言った。
「やあ柳生。さっぱりしたかい?」
「ええ。真田君、柳君、有難う御座いました。仁王君と黒崎君は我々で見ますので。」
「ああ。お前達2人も行って来いよ。」
「そうだな、後は俺達だけのようだ。真田、此処は甘えるとしよう。」
「あのー、俺と仁王を先に入れてくれると言う選択肢は、」
「あるわけがなかろう!お前達が入るのは一番最後!被写体になる人間が居なくなってからだ!」
「酷い・・・!」
よよよと泣き真似をして見せる棗だが、今更そんなものにつられる人間など此処には居ない。
「というか、俺だけじゃなくて仁王はもう少し参れよー。なんか俺だけが狼狽えてるみたいじゃん。」
「バレたらこうなるっちゅう前提で話をするもんじゃろ、この手の事は。」
「むぐぐ、安定の開き直り振り・・・!」
反省とか後悔とか、そんなもんするくらいなら最初から悪戯なんてせんわ、なスタンスの仁王は基本けろりんぱとしている。
「今更べそかいてもどうにもならんぜよ。そんな事しとる暇があるんなら次のタネでも覚えておいた方が自分の為じゃ。」
「次のタネ?」
「あちらの事では?」
あちら。
柳生が指差した方では、丸井がご機嫌さんで髪を拭いて貰っている。