棗はこの夏に備えて、ウォーターガンを揃えていた。
勿論、皆で海で騒ぐためだ。
ただ、これはあくまで皆で騒ぐためのスパイス。
目的は楽しい思い出を作ることであって、ガンを使うのが主目的じゃない。
だから、時には切り捨ても必要なのであって。
「は~あ・・・」
「しつけえなもう、どうしようもないんだからいつまでも落ち込んでんなよ。」
「だあってー!」
「こればっかりは運だからなあw」
「もしかしたら、って事もあるかなとは思ったんですけれど・・・」
「やっぱりダメだったね。」
5人は遊びに行くために移動中。
待ち合わせは5つ向こうの駅。
乗っている電車は、ざあざあ叩きつける雨の中、湘南の街を縫って走る。
そう。
なんと今日は生憎過ぎる大雨。
降水確率朝にして90%という、てるてる吊るす気も失せるような無情な天気予報は当然のように大当たりし、今日はもう起きた時からざあざあ降り。
一応昼からは晴れるらしいのだが、朝に派手な雨が降ると海は荒れてしまって、如何に晴れていても危なくなってしまう。
しかしかといってテニス部は多忙。みだりに、じゃあ日をずらそうかなんて事が言えるわけもなく。
「海に行きたかったあ~!」
「俺達だって行きたかったのは山々だよ。」
「ガンまで買ったのになあw」
「プールじゃ禁止ですから・・・」
「もう今日は割り切ろうってば。」
「ああそうだ五十嵐、プールならウォータースライダーが出来るよ。」
「スライダー!」
「それに、色んなプールで遊べますよ。波・・・は、海もですけれど、流れるプールや、あったかいプールや、ジャグジーみたいなものとか・・・」
「クラゲとかも居ないしね。シャワーも更衣室も広くて綺麗だし。」
「帰りに温泉も入れるしなw」
「・・・あれ?何かプール良くない?プール良いね!あ、何か紀伊梨ちゃんちょー楽しみになってきた!早く着かないかな~♪」
「単純か?」
「まあまあ・・・楽しい気分になってくれたみたいなので。」
「ふふ、折角遊ぶんだしね。」
「一日楽しまないとなw」
窓の外はいっそ少し暗い程だが、一同の空気はすっかり明るくなっていた。
一方、プール前の駅ではもう幸村を除くテニス部メンバーが皆集まっていた。
完全に偶々だが、今回行くことにした屋内レジャープールは幼馴染組5人の住んでいる地域から一番遠く、雨での電車遅延も相まって若干遅れ気味になってしまったのだ。
「どうですか?」
「うむ、やはり15分ほど遅れているようだな。5人揃ってはいるとの事だから、駅に着きさえすれば問題はなかろう。」
まあしょうがないよね、と思いながら一同はなんとなく駅の外を伺う。
こんなに降ってるんだもん。そりゃ電車も遅れるよ。
「来るまでの間にずぶ濡れになりそうじゃ。」
「まあ、元々濡れるつもりで来ているのだし水着も着替えもある。行きは濡れてもさして問題ない。」
「まあな、大体は服の下に水着着てくるだろうし・・・ブン太。」
「ん?」
「・・・あのな。」
「おう。」
「・・・・・・・」
「?」
どうしよう。
桑原としては、この間と同じ轍を踏むなよと言ってやりたい。
ただ。
(実際ブン太がどう思うかはブン太の自由だからな、思ってもないのに言えなんてのは、ブン太に悪いし春日に失礼だし・・・それに、何か浴衣は褒めないで水着はすぐ褒めるってのも何か、ブン太がエロ男子みたいに思われるかも・・・いやでも、また同じ事が起きたら・・・)
「?おーい、ジャッカル?」
「桑原は苦労症じゃの。」
「優しい性格ですから、気が付いてしまうんでしょう。親友の事は特に。」
「気が付かん方が時には楽な事もあるぜよ。」
「ああ・・・」
「む?何だ?」
「いえ、何でもありませんよ。」
「桑原。難しいだろうとは思うが、お前の問題じゃない。あまり気に病むな。」
「ああ・・・あれ?俺声に出してたか?」
「なあって。結局何なんだよ?」
「丸井も放っておいてやれ。」
「なんで?つうか、俺がそもそも話かけられてたんーーー」
「おーーーい!皆ーーーー!」
「来ましたね。」
「ああ。おい、話は後だ。」
駅ででかい声を出すな!と真田にのっけから怒られる紀伊梨を見ながら、一同はプールへと足を向ける。