Festival of ocean:Captive 2 - 1/5



昼過ぎになろうかと言うときだった。
ビードロズとテニス部合同のグループラインに、千百合からメッセージが入った。

たった一言だけ。

『大丈夫だから、心配しないで。』

全員が何のことだかよくわかっていなかった。

だから皆返信を打った。

急にどうした。
誤爆か。
何かあったのか。

千百合からの返事はなかった。

そのわずか数分後であった。

スピーカーから放送が入ったのは。


『・・・あー、あー。テストテスト。ただいま、マイクのテスト中。』


「え?」

紫希は急に聞こえた声に顔を上げたが、丸井に仁王、林は流石に一瞬で気づいた。

「ねえ、今のって・・・」
「そうじゃな。」
「え?え?な、何がですか・・・」
「今の、部長の声なんだよ。」
「部長・・・テニス部の部長さんですか?」
「そ、佐川部長。」

『・・・よし、感度良好。ほら。』
『・・・ありがとうございます。』

「あ!」
「今の声は・・・・」
「あ、やっぱそーだよねー!誰か知らないけど、この声マネジさんでしょ?紀伊梨ちゃん、聞いたことあるから知ってるもんね!あり?え、てことはー・・・」
「ああ。部長と鳴海先輩が放送しているということだ。」


『・・・1年D組、幸村精市君。』


「・・・・・!」

幸村は顔を上げて眼を見開いた。

ここは中庭。
SASUKEがすぐそこにあるおかげで賑わっていたおおぜいの人達は、今皆幸村を見ている。

幸村は視線を走らせる。
声の主がどこに居るのかわからないけれど、探さずには居られないのだ。

幸村はもちろん、声の主が2年生マネージャーの鳴海千佳子であることを知っている。
でも、まさか自分の名前が出るなんて。

(これは一体・・・)


『・・・幸村君。あなたの彼女・・・黒崎千百合さんはこっちで預かってるよ。無傷で返して欲しければ、「白の塔」まで自分の力で奪い返しに来てね。』


「!」

今度こそ幸村は息を吞んだ。

前後のことはよくわからないが、もうこの際わからなくても良い。

わかっていることは、千百合が囚われていること。
解放するには、白の塔とやらに行かねばならないということ。

それで十分だった。

しかし。

「白の塔・・・」

白の塔、とやらが幸村にはわからない。

今聞こえてきた放送からは、「やること」と「行く場所」と「引き起こした人」がクリアになった。
「いつまでに」という時間制限はない。だから、1分1秒遅れたからロスになる、ということは無いはず。それでも気持ちは焦るが、猶予はまだある。

どこなのか考えていると、肩を誰かから叩かれた。

「はい?」

「幸村君。」

「・・・一条先輩。」

一条直樹。
千百合のベースの師。
幸村もはじめましてではない。

その彼が今、皆の見てる前で言った。

「教えよう。それが僕の役だ。」
「役?」
「まあ別に僕じゃなくても良いと言えば良いんだが、生憎うちのクラスにはテニス部が鳴海さんしか居なくてね。他に君と繋がりがある人間と言うと、僕くらいしか居ないんだよ。」

今の発言からわかることはわんさかあったが、それも今はどうでも良い。

「・・・では、お言葉に甘えて。一体どこにー--」

一条は、す・・・と彼方を指さした。

「あそこだ。」

そう、そこは。
前人未踏の、2ーD組が誇るSASUKE最難関ステージ。
Sコースのゴールだった。