Training camp – in Hyoutei gakuen -:Thunderstorm 1 - 4/5


忍足はどっちかという周到な性格と言って良い。
念のため、とかこんな事もあろうかと、みたいな事を考えるのは珍しくないし、普段から無理のない範囲で行動にも移している。

まあ今回の場合、結果的にそれが原因でこうなったのだが。

「有難う!本当に助かっちゃった。」
「まあ通り道やさかい。」

念のためね、念のため・・・と思って忍足が多めに持ってきたビニール袋は、テニス部の分と体操部の分のタオルを両方突っ込んでも大丈夫な枚数があった。
タオルそのものは嵩張るものの重いわけではないので、可憐と同じ憂き目にあっていた彼女を手伝い、3人で体操部に寄る事にしたのだが。

「・・・・・」
「?なあに?」
「あ、あのっ・・・お名前が、雨見・・・」
「あ、私雨見架純って言うの!よろしくね。」

体操部で、忍足と同クラスの雨見架純。
昨日までなら、ふうんそうなんだとしか思わなかった一女子生徒であるが。

(・・・この子あれだよねっ?昨日音楽室で揉めてるの聞いちゃった時に名前が出てた、かすみんって呼ばれてた子・・・)

ということは、この子は忍足に片思いしているわけだ。そして、体操部の男子に思いを寄せられても居るけどそれに気づいていないという。

本人も知らない所で一方的にその人の事情を聞いてしまってるという何とも言えない居心地の悪さに、可憐は思わず黙りがちになってしまう。ドジな自分が下手なことを喋ると、言ってはいけないような事をぽろっと口走ったりしてしまうかもしれないし。

しかし。

「テニス部大変そうだね!」
「せやな、まあハードやな。何せ跡部がトップやから。」
「でも、そんなハードな部活でついていってる忍足君は凄いよ!尊敬しちゃうなあ・・・」
「おおきに。」

(これ、黙って聞いてるの結構複雑だなあ・・・!)

何か、どういう会話聞いてても他意があるように聞こえてしまう。普通に聞いていられないというか。

「学校に泊まるってどんな感じ?なんだか面白そう。」
「まあ新鮮ではあるわ。」
「だよね・・・ねえ、やっぱりマネージャーさんも泊まってるの?」
「ああ、皆泊まってるで。」
「そっか、良いなあ。私もお泊りしてみたいなあ。」
「体操部は合宿ないん?」
「あるけど・・・ほら、どうせなら・・・ね?」
「どうせなら学校が良い?」
「じゃ、じゃなくてその・・・」

わかる、多分だけどわかるよ言いたいことは。
どうせ泊まるんだったら好きな人と一緒が良いよね、そうだよね。

可憐の気分は実に複雑である。
気持ちはわからんでもない分気の毒だから、忍足側から多少は察してあげてもという気持ちもあるし。それはそれとしてなんとなくもやもやするから、このままスルーで終わって欲しいなという気持ちもあり。

「あ!いたいた、可憐ー!」

廊下の向こうから、女生徒が手を振っている。
今日同じグループだったマネージャーである。

「あ、はーい!ごめん遅くなってっ!今戻るーーー」
「じゃなくてー!私らもうお昼になっちゃったから、タオル預けて食堂行こうよ。」
「え!?」
「ね、良いでしょ?忍足君もさ、2人でなんとか・・・あれ!?ちょっとまって、こっちの人うちのマネジじゃない!誰?」
「ちょ、ちょっと色々とっ!」
「あ、そ、そう・・・うーん・・・」

トーンダウンするマネージャー。
マネージャー的には、可憐+忍足+テニス部マネジの構図に見えたから、ここから可憐が抜けても問題はないなと思ったのである。しかしこれがマネジどころか他部活の生徒となると、本来その仕事をやるべきマネジが一抜けて、関係ない人が2人雑務をする事になるのだ。

しかし、誰が何をいう前に雨見の方が早かった。

「良いよ、私。テニス部まで運ぶんでしょ?やるから、桐生さんはお昼に行って。」
「えっ!そ、そういうわけにはっ!」
「良いの良いの。元々私が手伝って貰った側なんだし、そんな大変な事でもないし。」
「まあ、その方が効率はええわ。」
「それはそうだけど・・・」

良しとして良いのかなこの場合、とマネジ2人が思う中、忍足は可憐の持っていた分をサッと自分の手に取ってしまった。

「あ・・・」
「ほんなら、雨見さん。悪いねんけど。」
「はーい、了解です!じゃあそういう事だから、任せてね。」
「は、はい・・・」
「よろしく・・・」

よろしくとしか言えず、可憐は手ぶらで食堂へ向かうことになった。