まあ遅かれ早かれ、誰かこうなるだろうなとは、皆思っていた。
最初はたまたま桑原だった、と言うだけの話。
「あっ!」
カィン!
と良い音がして、返球がボードの枠で跳ねた。
枠に。
パネルではなくて。
「・・・悪い。」
2巡目半ば。
此処に来て初めて、パネルを落とせない者が出たのだった。
「ドンマイドンマイ!落ち込まないでいきやしょー!」
「っていうかしょうがなくない?」
「まあな。他の奴らなら出来るんか、っちゅう話になると、柳以外じゃ厳しいぜよ。」
1巡目の時点で両チームともにアタックチャンスが出た。
ので、2巡目開始時点で残ったパネルは3枚。
紀伊梨が落とし、柳が落とし、残りたった1枚をピンポイントに抜けるのが、果たして今この場に何人居るか。
「こう言うとなんだが、向こうも同じ状況で次に回るのは春日だ。外す確率は97.765%だから、そうそう遅れは取らないだろう。気にしなくて良い。」
「そうか?そう言って貰えると有難いんだが・・・」
「それよかお前さん、ゲームの方をしっかりしんしゃい。」
「う!」
「そーよ。失敗したらパネル戻るんだからね。」
「うんうん!責任じゅーだいですぞ!」
「プレッシャーかけないでくれ・・・」
最初に説明されたルールだが、パネルを落とせないとゲームのみ要求される。
クリアできればそのまま進むが、出来なければ1枚戻ってしまうのだ。
落とせなかった以上、せめて足を引っ張るような真似はしないでいたいなあ、というのは人情だが。
「こういう時に限って変なの来るよねw」
「止してくれ・・・」
「それを決めるのは俺じゃないからなwさてドン!」
【好きな子に告白するならどうやって行う?】
「こっちか・・・」
「いよいよ混じり出したって感じじゃき。」
「入っているだろうなとは思っていたがな。」
「何がー?」
「恋愛系お題でしょ。」
そう。今迄なんのかんの、ダイレクトに恋愛を匂わせるお題は出ていなかった。
ただ入ってないという事は棗の性格上考えづらいので、どこかで誰かが当たるだろうなとは皆なんとなーく思っていたが。
「どうやって・・・という事は、方法の話ですよね?」
「ええ。どういった台詞で、などの指定が入らなかったのは、不幸中の幸いと言うべきでしょうね。」
「怖え事言うな柳生・・・」
「確かに、シチュエーションなら兎も角、告白の言葉を言えって言うのはちょっと緊張するね。」
(苦手な類だ・・・いや!苦手だなどと言うのは良いわけだ!しっかりしろ真田弦一郎、たるんどるぞ!)
(どうやって・・・どうやって?どうやってってこう、普通に・・・)
「・・・普通に言うと思うけど。」
「マジかよw」
「そんな可笑しい事言ってないだろ!」
「今のご時世、そうしようと思えばメールでもなんでも出来てしまう。手段としては他にもあるが。」
「メールとか手紙とかはちょっとな・・・」
「おや。桑原君はお手紙などはお嫌いですか?私は奥ゆかしくて良いと思うのですが。」
「嫌いじゃないけど、告白だなんだって時に手紙とかにするとこう、行き違いみたいなのが発生しそうで・・・」
「本当それー!」
「仰る通りです。」
「凄い分かるわ。」
「おっと、3人娘の同意が得られたぜよ。」
「だーって、私達ずーーっとゆっきーへのラブレターの配達係さんだったんだよー!?もー面倒くさいよー!」
ビードロズ3人の心の叫びである。
「そうだったの、幸村君?」
「うん。俺としては不本意なんだけれどね・・・」
「行き違いとはどういう事だ?」
「ええと、例えば何通か手元にある状態ですと1枚だけ他の物に紛れて、幸村君に渡しそびれてしまったり・・・」
「休み時間に渡そうと思ってたら、朝の間に渡してくれると思ってたのに、とか言われたり。」
「一回だけだけど、振られちゃった、どうして手紙渡してくれる時に私の事アピールしといてくれなかったの!って言われた事もあるなー!」
「それは行き違いじゃなくてただの八つ当たりではないでしょうか?」
本人からしてみれば、今この瞬間世界で1番の不幸を味わっているのだから八つ当たりくらい許せ、とでも思っているのかもしれないが、正直言って良い迷惑である。
「たるんどる!人に文句を言う前に自分でやらんか!」
「確かに手紙が嫌になりそうな成り行きだな。」
「手紙そのものが悪いわけではないんですけれど・・・やっぱり、人を間に入れるとどういう事になるか分かりませんから。」
「というか、そういう時って下駄箱に入れたりとかしないのか?俺はブン太がそう言う風に受け取ってる所しか見た事ないんだが・・・」
「目通して貰えるか不安になるんでしょ。量が量だし。」
「ゆっきーの下駄箱いっつもパンパンだったからなー。」
パンパンになるほど片思いの人居たのか?という疑問も出そうだが、幸村は何かと目立つ為、同学年のみならず先輩や後輩、はては他の学校からも思いを寄せている人は沢山居た。
南湘南小学校は普通の小学校で、別に立海のように生徒数がべらぼうに多いわけでも無いけれど、それでも下駄箱には何時も誰かからの手紙が山と入っていた。
「まあ話を戻すと。兎に角、もし告白だとかする気になっても、俺は多分直接言うな。」
「賢明ですねw」
「確かに、誤解とか行き違いは一番生じにくいからね。」
「・・・・・・・・」
「千百合っちー?どったの?」
「別に。」
確かに誤解とかは少ない。
でもその代わり、直接言うって勇気が要るのだ。
自分の心と言う名の皿に盛って盛って山盛りにして、それでもまだ足りないようなレベルの量の勇気が。
そうだ、その事を思えば普段自分が勇気が要ると思ってるあれやこれやなんて大した事。
別に大した事は。
(・・・いややっぱり辛い)
(とか、考えているんだろうね千百合は)
別にそんな事考えなくても良いのに・・・とか思う反面、考えてくれてる事そのものが愛くるしくて
つい微笑んでしまう。
「幸村?どうした?」
「ううん、なんでも。」
(柳生、覚えとけ。幸村君のああいう顔は、黒崎の事考えてる時の顔だからな。)
(ほう、それは覚えておかなくては。)
(段々皆対千百合ちゃんの時の幸村君に慣れてきてますよね・・・)