Solicitation:1st game 3 - 3/7


真田が3度目に回って来た時、残りパネルは5枚だった。2枚目ボードの1番を抜いた幸村の後に、柳生が真下の4番を抜き。
紫希は8番を抜く事が出来て、丸井が7番を抜いてくれたので、今右縦列の3、6、9と真ん中の2番と5番が残っている。

「良いかいw」
「待て。まだ何処を抜くか決まっとらん。」

(2番か9番を抜いて横の列を1列空ける方が据わりが良いように思う・・・とすると、真ん中の列の2番の方は柳生と春日の為にも、残した方が良い。という事は9番を狙うべきであって、)

当たり前のように、何処のパネルでも正確に落とせる前提で物を考える真田。

「良し、決めた。」
「決めたってなんだよwよっ。」

(おかしな事を聞く奴だな)

決めたって、抜く所を決めたという事。
そして其処を必ず抜くという事だ。

「はっ!」

真田は9番を狙った。
そしてボールは当たり前のように、9番パネルの真ん中を貫いた。

「真田君、凄いです・・・」
「私達も尽力しましょう、春日さん。」
「はい!」
「彼奴黒崎に聞かれた事の意味分かってねえよな。」
「ふふっ。弦一郎にとっては、何処を抜くか決める事と其処を抜く事は、イコールだからね。」

「お前とか幸村が居るとガチでゲームバランス壊れ丸w」
「?何の話だ?」
「こっちの都合だから気にしないでwはいドンw」

【最近あったラッキーな事は?】

「・・・難しそうです。」
「だろうね。」
「そうなのですか?」
「簡単じゃねえ?」

「彼奴運が良いとか悪いとか、そういう物の見方しないからね。」
「真田は基本的に、自分に起こる大凡の事象は自分に起因していると考えて居るからな。」
「???」
「ええと、要するに。真田は自分に悪い事があったら自分が悪いからだと思うし、良い事があったら自分の努力の成果だと思う、って事だ。」
「へー!なんだか疲れそー!」
「まあ疲れるのは本当じゃ。」

(最近あった、運の良い事・・・運の良い事だと?)

思いつかない。
何かあったっけ、運の良い事。

「・・・そうだな、先日行きつけの骨董品店で良い品を手に入れられて、「ちょっと待てw」

思わず突っ込んでしまう。

「なんだ?」
「なんだじゃない、行きつけの骨董品店って何よ、行きつけの骨董品店って。」
「中学生が行きつけるような場所じゃないだろい。」
「価格帯的にも趣味的にも珍しいよな・・・」

「おや?皆さん、そういう所には行かれないので?」
「俺は時々見に行くな。スケジュール的に、そう頻繁には無理だが。」
「俺も偶には行きたいんだけど・・・」
「スケジュールですか?」
「それ以上に、見ると欲しくなってしまうからね。意識的に避けている所もあるんだ。」

「お前さんは行く気も行く機会も無さそうじゃの。」
「しつれーなー!行かないけど!」
「見んしゃい。春日も・・・いや、春日は行くか?」
「骨董は行きませんね。偶に古本屋さんには。」

「ちょっと待ってwなんか会話おかしくないw」

ここに居る全員齢12か13かそこらなのに、日常的に骨董を見に行く人間が何故こんなに多いのか。
棗はなんだかおかしな笑いが出てしまう。

「幸村はまあ知ってるわwお前は趣味に絵画があるから、絵を見に行くんでしょw」
「ほう。それで欲しくなってしまうんですね?」
「うん。有名な画家じゃなくても良い絵は沢山あるし、手が出る価格帯のものもあるから。なまじ買えてしまうとどうしてもね。」
「なるほど、気持は分かります。・・・幸村君も、高い買い物をしたい、という衝動があったりするのですね。」
「ふふ、ちょっと恥ずかしいな。」
「いえ、却って親しみを感じますよ。」
「そうかい?そう言って貰えるとホッとするよ。」
「柳生、お前さん本当に親しみ感じとるんか?」
「ええ勿論。最も私は購入迄には至りませんが見るだけでも面白いですし。」
「柳生は何を見るんだい?」
「海外古書や、音楽関係の物が多いですね。いつか、質の良い蓄音機が欲しい所です。真空管にも興味がありますが。」
「ああ、奥深い世界だね。仁王はどうだい?興味はない?」
「ああ・・・お前さんら稀有な人種じゃな。わかっとったが。」

仁王はほんのちょっと、ほんのちょっとだけ、柳生を勧誘する自信が薄れそうになった。

「それほどおかしな事は言っとらんだろう。」
「ああ、俺もそう思うが。」
「私も幸村君の事は知っていますけれど・・・真田君と柳君は、何を見に行かれるんですか?」
「俺は花入や、茶器などが多いな。真田はさしずめ壺辺りか?」
「ああ。それから、稀に将棋の道具なども良いものが・・・」
「それは俺も良いものがあれば見るな。囲碁関係の物も、なかなか面白いぞ。」
「ほう、興味深いな。今度詳しい話を聞かせてくれないか。」
「ああ、勿論。こういった話をする機会はなかなか貴重だから、俺としても喜ばしい。春日も良ければどうだ?」
「あ、い、いえ、私にはまだ難しい話かと・・・将棋や、囲碁の基本も知りませんし・・・」
「なら教えよう。」
「ああ、お前ならきっと初歩的な事は直ぐに覚えられる。」
「あ、有難う・・・御座います・・・」

「紫希ぴょんが押されてるー。」
「あれは興味ねえけど、悪いから言い出せない、ってやつ?」
「うーん、知らない事だから勉強しないとって思ってるんじゃないかなー!紫希ぴょん、「何が作詞の役に立つか分かりませんから」って言って、なんでも勉強しちゃうし!」
「見習えよ。」
「うぐ!」
「本当に真面目だな彼奴・・・?」

丸井は隣の親友が、ひっそり小さく嘆息したのに気づいた。

「おら。」
「あで!」

徐にラケットで桑原の脇腹をつつく丸井。
痛いと言いつつ痛くはないけど。

「おいブン太、」
「ほれ、ほれ、ほれ。」
「ちょ、おい、こら!なんなんださっきから!」
「べっつにー?」
「別にってーーー」

何が別にだ。
そう言おうとした言葉は、丸井のびっくりするくらい穏やかな眼差しに消えていった。

「・・・・悪い。」
「何が?」

そう言いながらプーッと風船を膨らます丸井は、大人しくなった桑原に満足して目線を戻した。

「・・・・・・」
「植物園での事は分かった?」
「・・・っくりした、いきなり話しかけないでよ。」
「ふふっ、ごめんね。」

幸村は微笑んだ。

立海大附属は、私立の中学である。
公立に通うよりお金もかかる。

ジャッカル桑原。
彼の家の経済状況があまり芳しくない事は、幸村も真田も柳のデータから知っていた。
確率は今の所そこまで高くは無いが、もしかしたらその絡みの事情で部を辞めたりする事もあるかもしれない。そういうレベルの話である事も。

貧乏そのものは別に恥ずかしい事でもなんでも無いけれど、こういう時、住んでいる世界の違いみたいなものを感じて、ちょっと疲れてしまうのは仕方がない。
仕方がないから、疲れてるな、と思ったらサッと引き上げてやれば良い、と丸井は思っている。

そして丸井がそう思って行動に移してくれる事を幸村達三強は知っていた。

「でもまあ、分かった。あれが紫希の言う、「丸井は優しい」って奴ね。」
「そうだね。」
「でも、その割に柳生が財布の心配するレベルで物たかるのはどうなの。」
「それは又今度、言っておくけれど。」

でも多分。
お金じゃどうにもならないものを、桑原はかつて丸井から貰ったのだろう。
もしかしたら、今も貰い続けているのかもしれない。